なかなか治らないうつ病の方の研究をシェアします
アメリカの研究報告で、なかなか治りにくいうつ病には「葉酸欠乏」などの代謝の問題が隠されているのではないかという内容です。
The American Journal of Psychiatryという有名な雑誌に掲載された論文です。
今回、この研究で調べられたのは、治療してもなかなか良くならないうつ病の患者さんです。
専門用語では、難治性うつ病とか、治療抵抗性うつ病などと言ったりします。
うつ病の患者さんの中には、難治性、治りにくい人が15%以上いると言われています。
今回は、難治性のうつ病の患者さんの中でも若い方が参加した研究です。
こうした若い難治性うつ病の方の代謝が調べられました。
代謝とはかなり広い意味を持ちますが、体の中で物質を分解したり合成したりする作業です。
代謝に異常が出ると、必要なタンパク質を合成できなかったりして、病気になるわけです。
さて、今回ご紹介する研究では、難治性のうつ病に苦しむ若者、33人が対象になっています。
その子たちの血液、尿、髄液(脳や脊髄の周りにある体液)を検査し、代謝異常が無いか調べられました。
この結果は、16人の健常者と比較されています。
すると、ちょっとびっくりする数字ですが、33人の難治性うつ病患者さんのうち、21人に代謝異常が見つかったと言うのです。
2/3という割合は、かなり多いと思います。
そして、健常者では、代謝異常は一人も見つかりませんでした。
圧倒的に、難知性うつ病の患者さんの方が、代謝異常を持つ割合が多いわけです。
一番多かったのは、脳内の葉酸欠乏で33人中12人いました。
葉酸とはビタミンの一種で、サプリメントとして薬局でも売っていますね。
血液でも葉酸は測れますが、脳内の葉酸欠乏では血液検査では葉酸が正常値なので分からないみたいです。
だから、この研究では、髄液という脳や脊髄の周りにある体液を調べて、葉酸(5-メチルテトラヒドロ葉酸)が欠乏していることを確認しています。
脳内の葉酸欠乏は、ここまで検査しないと分からないみたいですね。
そして、この脳内の葉酸欠乏が見つかったうつ病患者さんに、葉酸を投与したところ、うつ病が治ったということです。
ちなみに、うつ病は、例えば高齢者だと脳梗塞の影響が強かったりと、年代によって原因も変わってきますので、年代を見ることも大事です。
今回は、若者の研究ですから、この数字は、若者だけに言えることです。
しかし、少なくとも、若者のうつ病で、なかなか治らない場合は、代謝異常の可能性も考えた方が良いのかもしれません。
また、葉酸の効果にも注目したいです。
昔から、難治性うつ病に葉酸が効く人がいるとは言われていましたが、この研究結果から考えると、脳内の葉酸欠乏がある人が結構いるからなのかもしれないですね。
最後に一点。
今回の研究では髄液を検査してますけど、髄液検査って背骨の間に針を刺して脊髄の周りの体液を抜く検査で、痛みもありますし、結構手がかかります。
検査される側も、検査をする側も負担が大きい検査です。
だから、総合病院では可能でも、精神科のクリニックなどでは難しい検査です。
これから、難治性のうつ病では髄液検査をしましょう、という時代になったとしても、広く普及することはないかもしれませんね。
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