ベンゾジアゼピンの上手な使い方
ベンゾジアゼピンという薬は不安をとったり、睡眠を促す作用があります。不安を取るタイプのベンゾジアゼピンには、ソラナックス(アルプラゾラム)などがあり、デパス(エチゾラム)は構造的にはチエノジアゼピンになりますが、ベンゾジアゼピンとほぼ同じ作用と考えられている抗不安薬です。睡眠を促すベンゾジアゼピンにはレンドルミン(ブロチゾラム)やサイレース(フルニトラゼパム)などがあります。 こうしたベンゾジアゼピンは即効性があって便利なのですが、依存性や様々な副作用があります。過去に、ベンゾジアゼピン依存症の治療について解説しましたが、依存から抜け出すには、なかなか時間がかかることになります。 こういう風に薬のリスクを聞くと、「それでは、ベンゾジアゼピンを使わない方が良いのではないか?」という疑問がわいてきます。しかし、やはりベンゾジアゼピンはとても便利な薬です。特に、今の日本のように多くの人がストレスや不安を感じる社会では、ベンゾジアゼピンのようにすぐに不安を取り除いてくれる薬を求める人は多いと思います。ベンゾジアゼピンが使えないとなると困る人も多いはずです
ベンゾジアゼピンと適応障害
新しい職場に馴染めない、新しい上司や先輩、同僚などと良い人間関係が保てない。こんな状況は誰でも辛いですよね。さらに酷いと、長時間労働を強制されて寝る時間もない、上司から罵倒され続け心がボロボロ。このように職場の環境が原因で、うつ状態になったり、不安症状から自律神経系のバランスが崩れ動悸や吐き気などの症状が出る方は多く、これを適応障害と言います。(適応障害の治療については過去のこちらの記事参照) どうも、うつ病の方が名前が分かりやすいからか有名になってしまいましたが、本当は環境因からうつ状態になった場合は適応障害のケースが多いのです。うつ病はさらに重症で症状が24時間毎日続くようなものを言います。 さて、以前の記事でも解説しましたが、この適応障害の原因は職場の環境ですから、その原因から離れれば精神症状や自律神経症状は治ります。例えば、休職する、職場を異動する、転職するなどすれば、動悸や吐き気は無くなり、ずっと眠れなかった人でもグッスリ眠れるようになります。気分は明るくなり、冷静に物事を考えることもできるようになります。しかし、原因から離れるという選
ベンゾジアゼピンとクリニックの収益
日本のメンタルクリニック、精神科、心療内科(名前は違えど基本は同じものですから、以下メンタルクリニックに統一します)は薬をたくさん出すため、よく「患者を薬漬けにする」などと非難されることがあります。これは事実なのですが、薬にもたくさん種類があるので、ここはもう少し深く掘り下げるべきでしょう。 色々なケースがありますが、今回はベンゾジアゼピンという種類の薬について注目したいと思います。ベンゾジアゼピンは、主に不安を取るタイプ、例えばデパス(エチゾラム)やソラナックス(アルプラゾラム)などと、睡眠薬のタイプ、レンドルミン(ブロチゾラム)やサイレース(フルニトラゼパム)などがあります。このベンゾジアゼピンは即効性があります。使った方の中には、すぐに効くのでとても助かるという意見もあります。ただベンゾジアゼピンは1ヶ月以上使い続けると依存性が出てきて、精神的にも身体的にも依存してしまいます。そのため、精神的に落ち着き、薬を使う必要が無くなっても、なかなかベンゾジアゼピンをやめられないという問題が起こります。これをベンゾジアゼピン依存症と呼んだりします(以

ベンゾジアゼピン(デパス、ソラナックスなど)依存症の治し方
ベンゾジアゼピン(benzodiazepine)はベンゾ(benzo)などとも略されますが、脳に作用して不安を和らげたり、睡眠を促したりする薬です。筋肉の緊張をとったり、てんかん(意識を失ったり、けいれんしたりする症状)を止める作用もあります。 ベンゾジアゼピンには色々あります。代表的なものですと、例えば、ソラナックス(アルプラゾラム)などは不安をとる目的でよく使われるベンゾジアゼピンです。また、デパス(エチゾラム)は構造的にはチエノジアゼピンですが、ベンゾジアゼピンと同等の作用、副作用があり、同類と扱って良いと思います。睡眠薬として使うタイプには、レンドルミン(ブロチゾラム)やサイレース(フルニトラゼパム)などがあります。 このベンゾジアゼピンは依存性という問題があります。覚せい剤ほど依存性が強いわけではありませんが、お酒やタバコと同じように、やめたくてもやめられない状態になりやすいのです。ベンゾジアゼピンを使うと、すぐに緊張が和らぎ、小さな快感を得ることができます。簡単に気持ちを落ち着かせることができる手段があると、それに依存してしまうのは人
子供の自殺
今回は子供の自殺について私見を述べます。 9月1日、夏休み明けに自殺が多いことが報道されるようになり、子供の自殺に対してメディアの関心が高まりました。 これを過剰に報道すると、かえって自殺する子供が増えるのではないかという懸念もあるので、表現には注意が必要かもしれませんが、大事な事実なので隠してはならないものだとも思います。 自殺に関しては、精神疾患だから治療すれば治るといった単純な話ではなくて、それが発生した経緯、原因について検証すべきです。 夏休み明け、学校が始まる前に自殺が増えるというデータは、明らかに学校という環境が自殺の原因であることを示しています。 そこには、同級生からのいじめがあったのかもしれませんし、先生からの体罰があったのかもしれませんし、もっと他の原因があったのかもしれません。 特定は難しいかもしれませんが、何らかの強いストレス、子供の心理を追い詰める何かがあったことは想像に難くないでしょう。 自殺は、ようは逃避です。 非常に辛い状況があり、そこから逃げたいが逃げる方法がない。 こう考えた時に、もう死ぬしかないと思ってしまう。

乳がんの治療で電車が怖い?
電車に乗っていると、ふいに恐怖におそわれ、胸がドキドキし、息が苦しくなり、冷や汗が吹き出る。 こんな症状をパニック発作と言います。 どちらかというと、女性に多い症状ですね。 そして、電車が怖くて乗れなくなる。 このように特定の場所が怖くなることを広場恐怖と言います。 他にもバスに乗れないとか、エレベーターに乗るのが怖いという方もいます。 閉鎖されていて、逃げ場が無い場所に恐怖を覚える方が多いですね。 狭い場所が苦手な人が多いのに、広場恐怖という名前は変だなと思うのですが(多分翻訳の問題でしょうが)、まあそんな名前になっています。 そして、こうした広場恐怖という症状が長く続き、時にパニック発作が起きるようだと、広場恐怖をともなうパニック障害とつなげて呼びます。 そのまんまの名前ですね。 ちなみに、これを自律神経失調症とか書いているサイトもありますが、それはもう使われない病名です。 広場恐怖やパニック障害の治療ですが、精神療法の他には、SSRIという脳のセロトニンを増やす薬を使います。 これは、以前にブログでも解説しましたが(うつ病ガイドライン徹底解

リチウム(炭酸リチウム)による双極性障害の治療
今回はリチウム(炭酸リチウム)という薬を紹介していきます。リチウムは1949年に双極性障害の躁病に有効と報告され、以来、双極性障害ではよく使われる薬になっています。双極性障害のうつ病にも躁病にも効果はありますが、どちらかというと即効性の無い薬で、非定型抗精神病薬の方が効果がすぐに出ます。このため、早く良くしたい場合には、非定型抗精神病薬の方が好まれます。 しかし、リチウムが本当に力を発揮するのは、病気の予防です。双極性障害は一度良くなり精神的に落ち着いても、しばらくすると再発してしまい、再びうつ病や躁病の症状が出てきてしまいます。このため、良くなった後は再発予防の治療が必要になります。これを維持療法と言いますが、リチウムはこの維持療法の効果、つまり再発予防効果がしっかりしているのです。 また、最近ですと、双極性障害だけでなく、通常のうつ病についても再発予防効果があるかもしれないという研究報告が出ています。こちらは、以前にここのブログでも紹介しました(「うつ病の再発をリチウムで防ぐ」の記事はこちら)。さらに、リチウムは水道水にも少しだけ含まれていた
仕事のやる気3
エッセイ調に仕事のやる気について語っています。 前回は報酬について話しましたが、今回は目標の立て方について話そうと思います。 遠くの目標と近くの目標、つまり、長期的な目標と短期的な目標では、どちらがやる気が出るでしょうか? 大体の人が短期的な目標なんじゃないかと思います。 「将来、ビッグになりたい」みたいに思っている人もいるでしょうが、それだけだと日々やる気を出せず、だらけてしまうことも多いのではないでしょうか。 これも、結局は報酬と関わっている話です。 すぐに報酬をもらえるか、ずっと後で報酬をもらえるか。 どちらを選びますか? こう問われたら、「そりゃ、すぐに報酬をもらえた方がよい」と思うのは、理屈というより本能的な考え方だと思います。 たとえ、ずっと後にもらえる報酬の方が大きくても、すぐにもらえる報酬の方が身近に感じますし、確実にもらえる気がします。 遠い将来に報酬がもらえるなんて、どうもあやふやで当てになりません。 将来の約束なんて、なかなか信じられないですよね。 このように、すぐにもらえる報酬の方がヒトの心を刺激するのであれば、目標も短期

ベンゾの害
日本で精神科に通院している人の中に、ベンゾジアゼピン系の薬(略して、ベンゾ)を使っている人はかなり多いです。ベンゾとは、主に睡眠薬や抗不安薬にあたります。例えば、抗不安薬だと、ロラゼパム(商品名:ワイパックス)、アルプラゾラム(商品名:ソラナックス・コンスタン)、ブロマゼパム(商品名:レキソタン・セニラン)、クロチアゼパム(商品名:リーゼ)、ロフラゼプ酸エチル(商品名:メイラックス)など。睡眠薬だと、リルマザホン(商品名:リスミー)ブロチゾラム(商品名:レンドルミン)、ニトラゼパム(商品名:ベンザリン・ネルボン)、フルニトラゼパム(商品名:サイレース・ロヒプノール)など。これらが、よく使われるベンゾです。 こうしたベンゾの弊害は強く、世界中で問題になっています。ベンゾを長期使用すると依存性が出現し、たとえ精神的に落ち着いても薬をやめられなくなる危険性があるのです。毎日1ヶ月以上ベンゾを使用し続けると、依存性が出てくると言われています。依存性が出ると、ベンゾを止めようとしても、落ち着かなくなったり、苦しくなったり、眠れなくなったりするので簡単にはや
仕事のやる気2
仕事のやる気、モチベーションについて、なんとなくエッセイ風に書いています。 前回は仕事のやる気について批判することに意味はないのではないかという話をしました。 これは、他人が自分のやる気について語るという外的な要因の話です。 今回は、もっと内的な話、自分の心の中の話をしたいと思います。 例えば、ラーメンがすごく好きな人がいるとします。 その人が、ある日、少し遠い場所においしいラーメン屋さんがあると聞きます。 すると、その人はワクワクしてきます。 どんなラーメンなのか、実際に食べてみたいと思うでしょう。 しかし、そこまで行くのにだいぶ時間がかかり、面倒といえば面倒です。 そこで、ラーメンを食べることと、移動の労力をてんびんにかけて考えます。 確かに移動は面倒。 ただ、やはりラーメンが食べたい。 きっとおいしいに違いない! そう思うからこそ、移動の労力をいとわず、遠いラーメン屋さんまで足を運ぶことを決めます。 これが、やる気の原点です。 おいしいラーメンを食べることができる! こうした「期待」があるからこそ、面倒な移動を我慢しようと思うわけです。 こ