

トリアゾラム(ハルシオンなど)
トリアゾラムについては、研究データが少ないのでなんとも言えません。 トリアゾラムは、ベンゾジアゼピン系に分類される睡眠薬です。 ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、脳のGABA受容体に作用して、眠気をもたらします。 副作用としては、ふらつきや、認知機能障害といって脳の考えたり記憶する能力が低下するといったものがあります。 また、長期に使うと依存性といってなかなかやめられなくなったり、耐性といって効果が弱くなるなどの問題が出てきます。 トリアゾラムは寝つきを良くする薬です。 0.25mgという用量で、プラセボ(偽薬ともいわれる、薬としての効果がないものです)よりも、約9分ほど寝入る時間を早める効果があるという研究データがあります。しかし、これは統計的には意味があるとは言えないようです。 また、睡眠時間については、自己評価で検討したものがありますが、0.25mgでプラセボより25分ほど睡眠時間を延ばすという結果です。ただ、これも統計的には意味があるかは分からないレベルです。 睡眠の質に関しては、少し良くなったと自覚する方が多いようです。 副作用に関するデー
脳トレの科学的な根拠
認知機能とは、記憶したり、学習したりなどの脳が持つ知的な働きのことです。
注意力、集中力も認知機能に含まれます。 この認知機能が少しだけ低下した状態が、軽度認知障害と呼ばれます。 これは、実生活にはまだ問題が出ない程度で、少し忘れっぽくなった程度の症状です。 認知症の一歩手前の状態で、グレーゾーンという言い方もできます。 さらに認知機能が低下すると生活が成り立たなくなり、ここまでいくと認知症と言われるレベルになります。 さて、今回はこうした認知機能が低下した人に、脳トレが有効かどうかを検証した研究を紹介します。 Computerized Cognitive Training in Older Adults With Mild Cognitive Impairment or Dementia: A Systematic Review and Meta-Analysis. The American Journal of Psychiatry. 2017(論文タイトル、雑誌名、発表年) ちなみに、日本で脳トレと言われるような、ゲーム機を使った頭のトレ
睡眠関連摂食障害とは?
(こちらは、過去にnoteに記載した内容を一部修正して発表しています) 睡眠関連摂食障害という言葉を聞いたことがあるでしょうか? ちょっと、めずらしい言葉だと思います。 まずは、普通の摂食障害から説明します。 摂食障害とは、食事に関する異常行動のことです。 これには何種類かのタイプがあります。 自分の体重が許せなくて過剰なダイエットを行い、どんどん痩せてしまう神経性無食欲症。 やけ食いを繰り返し、その後に太りたくないと吐いたり下剤を飲んだりしてしまう神経性大食症。 これらが代表的な摂食障害です。 この摂食障害の背景には、過剰なストレスや複雑な家庭の問題などがあることが珍しくありません。 若い女性なんかに多い精神疾患ですね。 そして、睡眠関連摂食障害というのは、寝ている時に起き出し、夜中にたくさん食べてしまうというもの。 例えば、ベッドで寝ていたところ、真夜中に起き出し、台所にある冷蔵庫を開けて、中にある食材をムシャムシャと大量に食べてしまうというのが一例です。 半ば眠った状態なので、本人は覚えてないことも多いみたいです。 本人にしてみたら、知らず


ゾルピデム(マイスリーなど)
ゾルピデムは、GABA受容体に作用して眠気をもたらす薬で、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬と似た作用ですが、副作用はベンゾジアゼピン系よりも少なくなっています。 この辺は、エスゾピクロンにも似ていますね。 ゾルピデムの有効性は、10mgで検証されていますが、寝つきを良くする効果、途中で起きるのを減らし睡眠を維持する効果、睡眠時間を延ばす効果、睡眠の質を高める効果などが認められています。 研究結果を見ると、PSGという機械を使った研究では、プラセボより12分ほど寝入るのが早まるという結果でした。また、自覚的にはプラセボよりも20分ほど寝入りが早まるという結果です。 PSGを使った睡眠時間の研究では、プラセボよりも29分ほど睡眠時間を延ばしたという結果でした。自己判断による結果では、プラセボよりも30分ほど睡眠時間を延ばすという結果です。 また、途中で起きるのを減らす効果もあると研究で示されています。 このように、ゾルピデムはなかなかに効能が多い睡眠薬と言えます。 なので、寝つきが悪い方や途中で起きてしまう方、もっと長く寝たい方に勧めることができる薬です。


エスゾピクロン(ルネスタ)
エスゾピクロンは、寝つけない方にも、途中で起きてしまう方にも有効な薬です。 脳のGABA受容体(定義は少し違いますが、ベンゾジアゼピン受容体ということもあります)という部分に結合して眠気を出す薬で、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬に近い作用ですが、受容体の結合する場所が微妙に違います。 そのため、ベンゾジアゼピン系の薬よりも副作用が少なくなっています。 また、ゾピクロン(商品名でいうとアモバンなどです)という薬もあり、化合物としての構造や薬効はほとんど同じになります。 様々な研究で、エスゾピクロンの2mgまたは3mgは寝つきを良くするという結果が出ています。 プラセボ、つまり偽物の薬と比べた数値を出しますと、、 睡眠を調べるPSGという機械を使うと、2mgでプラセボよりも15分ほど寝つくのを早めるという結果が出ています。ただ、3mgでも14分ほど寝つくのを早めるという結果ですから、2mgから3mgにしても、あまり変わらないようですね。また、これが機械ではなく自己判断になると、2mgで18分、3mgで25分ほど寝つくのを早めたという結果で、機械で測定した


スボレキサント(ベルソムラ)
スボレキサントは、睡眠を維持する、安定させる薬です。 脳にはオレキシンといって、目を覚ましたり、食欲のコントロールをする物質があります。 スボレキサントは、このオレキシン(正確に言うと、オレキシン受容体)をブロックする薬です。 目を覚ます作用のあるオレキシンをブロックすることで、目を覚まさないようにするわけです。 アメリカのガイドラインでは、スボレキサントは睡眠の途中で起きる中途覚醒を治療する作用があるとしています。 実際の睡眠薬の効果を調べる研究では、スボレキサントを投与する人たちと、プラセボ(偽薬とも言いますが、効果のない偽物の薬です)を投与した人たちとを比べます。 プラセボでも心理的な効果などで脳に作用して、少しだけ効果が出ます。ただ、これだけではおまじないのようなもの。このプラセボよりも効果があって初めて薬としての効果が認められます。 それでは、実際の研究結果を見てみましょう。 脳波などを測定して睡眠状態を検査するPSGという機械を使うと、スボレキサント10mgで22分、20mgで50分ほどプラセボよりも睡眠時間を延ばしたという報告があり
脳深部刺激療法と摂食障害の研究をシェアします
脳深部刺激療法という単語を聞いたことがある人は、きっとほとんどいないと思います。 これは、脳の奥に小さな電極を埋め込み、継続的に脳神経に電気的な刺激を送るという治療です。 主にパーキンソン病の治療に使うものですが、うつ病などの精神疾患の治療にも有効なことがすでに分かっています。 もちろん、手術が必要という大掛かりな治療になるので、薬の治療が効かない人、なかなか良くならない人だけに行います。 今回は、脳深部刺激療法が神経性無食欲症(摂食障害)に有効か否かを調べた研究を紹介します。 こちらは、カナダの研究です。 Deep brain stimulation of the subcallosal cingulate for treatment-refractory anorexia nervosa: 1 year follow-up of an open-label trial. The Lancet Psychiatry. 2017.(論文タイトル、雑誌名、発表年) 神経性無食欲症とは、太ることに対する異常な恐怖心から過剰なダイエットを行ってしまう精


うつ病ガイドライン徹底解説の目次
このコーナーでは、うつ病学会が2016年に公開した診療ガイドラインである、「日本うつ病学会治療ガイドライン II.うつ病(DSM-5)/ 大うつ病性障害 2016」を徹底的に解説しています。以下、目次です。 第1章「うつ病治療計画の策定」の解説記事 1. 身体の病気 2. 生活の様子 3. ストレス 4. 睡眠 5. 女性の場合 6. 検査 7. 自殺、自傷 8. うつ病に関係する精神疾患 9. 治療計画 10. 心理教育、うつ病の説明 11. 薬を使うときの注意点 12. 治療が失敗したら、、 13. うつ病が良くなった後に 14. うつ病はまあまあ良くなったけど、、 15. 病は気から 第2章「軽症うつ病」の解説記事 16. うつ病が軽症な場合の精神療法 第3章「中等症・重症うつ病 ~精神病性の特徴を伴わないもの~」 17. うつ病が重い場合の治療の概要 18. 新規抗うつ薬による治療 19. 三環系抗うつ薬など 20. 漢方薬、ベンゾジアゼピン系など 21. 最初の抗うつ薬が効かなかった時 22. 修正型電気けいれん療法 第4章「精神病


うつ病ガイドライン徹底解説28(最終回) 睡眠薬
今回は睡眠薬の具体的な種類と効果、副作用などを説明していきます。 ベンゾジアゼピン系睡眠薬 脳の神経にあるGABA受容体という場所に作用する睡眠薬です。依存性が強く、また、耐性がつきやすく使っていると徐々に効果が弱まるという弱点があります。この依存性や耐性は、長く使っていると出てくるので、あまり長期に投与しないよう注意喚起されています。 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬 ベンゾジアゼピン系睡眠薬と同様にGABA受容体に作用するのですが、依存性などの副作用が少なくなるように改良された睡眠薬を非ベンゾジアゼピン系睡眠薬と言ったりします。ゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロンなどがあります。ただ、他にも睡眠薬の種類はあり、どこまでを含むのか定義が曖昧で、俗称に近い言葉です。うつ病学会のガイドラインでは、非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬とベンゾジアゼピン系睡眠薬が同じ項目でまとめられています。ただ、うつ病の治療で注目すべきはゾピクロンとエスゾピクロンです。これらは、抗うつ薬と一緒に使うと、睡眠だけでなく、うつ病の症状も改善してくれることが分かっています。ただ、唾液


うつ病ガイドライン徹底解説27 よく眠るために
眠れない、不眠という症状は、うつ病の方のほとんどに見られます。 また、うつ病の様々な症状の中でも、不眠はなかなか治りにくいものです。 また、まれに寝すぎてしまう過眠という症状が出る方もいます。 このようなことから、うつ病と睡眠は切っても切れない関係です。 睡眠は、脳波計を使って詳しく分析することができます。 脳は一定の周波数の電気を発しており、それが脳波と呼ばれます。 眠り始めると、起きている時とは違う脳波となります。この脳波の変化により、浅い睡眠と深い睡眠を区別することができます。 うつ病の方では、深い睡眠が減ることが知られています。 また、睡眠の種類には浅い深い以外にも、レム睡眠というものがあります。 この間は体の筋肉は緩まっているのですが、目が動いています。この間に夢を見ることも知られていますね。 うつ病の方は、眠り始めてからこのレム睡眠が始まるのが早いという特徴もあります。 ただ、こうした特徴はうつ病だけの特徴ではなく、他の精神疾患でも見られます。 まあ、難しい話はさておき、とにかく、うつ病になると睡眠の質も量も変化するということです。