脳深部刺激療法と摂食障害の研究をシェアします
- Tomoyuki Saito
- 2017年4月22日
- 読了時間: 3分
脳深部刺激療法という単語を聞いたことがある人は、きっとほとんどいないと思います。
これは、脳の奥に小さな電極を埋め込み、継続的に脳神経に電気的な刺激を送るという治療です。
主にパーキンソン病の治療に使うものですが、うつ病などの精神疾患の治療にも有効なことがすでに分かっています。
もちろん、手術が必要という大掛かりな治療になるので、薬の治療が効かない人、なかなか良くならない人だけに行います。
今回は、脳深部刺激療法が神経性無食欲症(摂食障害)に有効か否かを調べた研究を紹介します。
こちらは、カナダの研究です。
神経性無食欲症とは、太ることに対する異常な恐怖心から過剰なダイエットを行ってしまう精神疾患ですが、健康を壊すまで痩せてしまい、栄養失調で命を落とす人までいます。
また、非常に治りにくいことでも知られ、有効な治療法は少ないのが現状です。
この研究では、治療しても治らない20歳から60歳までの神経性無食欲症の患者さんの、梁下帯状回という脳の奥の方にある感情を司る部分に電極を入れています。
この研究に参加した患者さんは、全部で16人で、平均年齢は34歳でした。
そして、神経性無食欲症になってからの年数は、平均で18年。
長い間この病気で苦しんでいたことが分かります。
これらの患者さんを12ヶ月続けて観察し、病状を評価します。
評価する項目で大事なものは、安全性と患者さんが受け入れられたかどうか。
そして、痩せているか太っているかを評価する指数であるBMI(body-mass index)、気分、不安感、感情の制御、食事の様子などといった病気に関わる部分です。
2人の患者さんは途中で中止を希望したとのことで、続けられたのは14人ですね。
副作用として最も多かったのは手術に伴う痛みで16人中5人が体験しました。
この研究に参加した患者さんの、元々のBMIの平均値は13.83(通常は18.5~25なので13.83は激痩せ状態です)でしたが、12ヶ月の脳深部刺激療法を終えると17.34まで回復していました。
また、研究に参加した16人中、14人が気分障害(うつ病など)か不安障害(パニック障害、全般性不安障害など)を持っていたそうですが、
うつ病の重症度を表すハミルトンうつ病評価尺度の平均点数は、治療の前後で19.40から8.79にまで下がっていたとのこと。
つまり、うつの症状が改善したという結果です。
ベックの不安尺度でも、平均点数が38.00から27.14まで低下。
つまり、不安症状も改善していました。
また、感情制御を測定する点数も、131.80から104.36まで低下。
これらの変化は全て、統計学的に計算して意味があるほど顕著(有意)でした。
つまり、偶然ではないということです。
また、脳の機能を測るPET検査でも、しっかりと変化が見られたのことです。
ただ、確かに症状の改善はあったのでしょうが、この研究では脳深部刺激療法を行なった人と行なっていない人を比べているわけではないので、多少の疑問は残ります。
例えば、こうした治療を行わなくても自然と良くなった可能性も否定できません。
もしそうなら、脳深部刺激療法という大掛かりな治療まで行わなくても良かったということになります。
さらなる研究を重ねないと結論は出せません。
でも、脳深部刺激療法が色々な精神疾患で効果がありそうという期待は増えますね。
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