
ニューロフィードバックでうつ病を治す
頭の中、心の中で起こっていることは目に見えません。 人の感情は表情や雰囲気で推し量ることはできますが、しっかりと見て確認するものではないですよね。 そして、自分の感情でもそれは同じことです。 自分がどんな感情になっているのか、時に分からなくなることもあります。分かりにくいとは、扱いにくいということでもあります。 感情をコントロールするのは、簡単ではありません。 それならば、感情を見えるようにすればいい、という発想があっても良いですよね。 ニューロフィードバックというものがありまして、これは頭のなかや感情の変化を機械を使ってリアルタイムに見えるようにし、その上でコントロールしていく方法になります。 脳波計を使うのが多いですが、最近ではMRIなどの画像検査も使われるようになっています。 これを、うつ病の治療に応用する研究があり、今日はそれを紹介します。 Randomized Clinical Trial of Real-Time fMRI Amygdala Neurofeedback for Major Depressive Disorder: Ef

ジスキネジアの薬(バルベナジン、デューテトラベナジン)
ジスキネジアという言葉を聞いたことがある人はほとんどいないと思います。 体の一部がウネウネと勝手に動く症状(不随意運動と言います)のことで、よくあるのは舌や口がウネウネと動く口腔ジスキネジアというものです。 これは、抗精神病薬など、ドパミン系の神経に作用する薬を長らく使っていると起きることがあります。 つまり、副作用です。 特に昔の薬はジスキネジアの副作用が起こりやすいです。 しばらく薬を使い続けてから出てくるので、遅発性ジスキネジアとも呼ばれます。 副作用の原理としては、ドパミン系に作用する薬を長らく使い続けると、ドパミン系の神経が勝手に興奮するようになってしまうことがあり、そのせいで筋肉が勝手に動くという流れになります。 ドパミン系の神経は精神にも関わりますが、筋肉の動きを調整する役割もあり、そこが狂ってしまうので、筋肉が勝手に動くんです。 このジスキネジアですが、一度起きてしまうと、原因となる薬をやめてもなかなか治らない、やっかいな副作用として知られていて、治療薬もありませんでした。 しかし、最近になりジスキネジアの薬が開発されたようです。

脳の形、大きさと自殺のリスク
双極性障害、別名、躁うつ病は、気分が落ち込むうつ状態と、気分がハイになる躁状態という二つの症状がでる病気です。 非常に情緒不安定となる精神疾患で、自殺をしてしまう人もいます。 精神疾患の原因には色々な要素があり、とても複雑なんですが、大まかに分けると、ストレスによるものか、脳の物理的な障害や遺伝的な要因などの生物学的要因によるものかに別れます。 双極性障害はストレスも影響するのですが、脳の生物学的要因が強い病気です。 別の言い方をすれば、脳科学的な要因と言えます。 今回は、この双極性障害の脳科学的な研究を紹介します。双極性障害と自殺の関係を、脳画像検査を用いたアプローチで解明しようとした、アメリカの研究です。 Multimodal Neuroimaging of Frontolimbic Structure and Function Associated With Suicide Attempts in Adolescents and Young Adults With Bipolar Disorder. Am J Psychiatry. 201


リチウムを単極性うつ病に
うつ病は治療し治った後も、再発する可能性がある病気です。 一生のうちに何度も再発するような人もいます。 このように再発を繰り返す人は、どうやったら再発を防ぐかという課題を抱えています。 一般的には、抗うつ薬を、うつ病が良くなった後も続けておくと再発をある程度は抑えることができます。 ただし、それでも再発する人もいるので、さらなる治療法が必要になります。 今回は、うつ病の再発予防の研究をご紹介します。 北欧のフィンランドの研究ですね。 この研究では、1987年から2012年の間にうつ病のため入院した人の記録を検証しています。 普通、うつ病は外来に通院しながら治します。 入院するということは、かなり重症のうつ病の方たちです。 この人たちがどんな薬を飲み、その後にまたうつ病を再発して入院していないかどうかなどが調べられました。 文献:Pharmacological treatments and risk of readmission to hospital for unipolar depression in Finland: a nationwide


なぜ精神科医はプライベートなことを聞くのか?
先日、精神疾患の無料相談フォームを作成したので、今回は精神疾患の診断について書きたいと思います。 精神科の診察・評価について詳しく知りたい方はこちら 精神疾患は精神症状を知るだけで診断できます。 実は、精神科の診断をつけるだけなら、結構簡単なんです。 人工知能なんか使わなくても、コンピューターに症状を入力していくだけで、ある程度は判断できます。 それならば、精神科医はただ症状だけを聞けば良いと思う方もいるかもしれません。 しかし、そうではないんです。 症状をチェックして、診断をつけるだけでは精神科の診察としては不十分です。 なぜなら、診断だけをつけても、その後の方向性までは決まらないからです。 例えば、同じ精神疾患でも、どのくらい重症かによって治療法を変えることは多いんですが、その重症度は、仕事や家事がどの程度できているかという個人の能力値で判断します。 そのため、仕事や家庭での生活の様子を聞かないと判断できません。 また、支えてくれる人がいない場合は、追いつめられていく可能性がありますから、精神症状が悪化するリスクが高いと判断できます。 最悪の


トピラマート(トピナ)
てんかん(急に意識を失ったり、痙攣したりする脳の病気)の治療薬であるトピラマートがアルコール依存症に有効であるという報告は多く、断酒の確率を上げたり、大量飲酒を抑える効果があるといったデータがあります。 効果は強くはないようですが、トピラマートがアルコール依存症の治療に有効だろうという科学的エビデンスは確立されつつあります。 日本ではアルコール依存症の治療薬として承認されていませんが、今後の研究次第では、アルコール依存症に使えるようになるかもしれませんね。 その他のてんかんの治療薬もアルコール依存症に効果が期待されて研究もされていますが、まだデータは十分にそろっていないようです。 アルコール依存症の治療ガイドライン徹底解説へ戻る #依存症


バクロフェン(リオレサール、ギャバロン)
バクロフェンは筋肉の緊張を取る薬として日本でも使われている薬です。 これは脳のGABA受容体という場所に作用して神経の興奮を抑えるんですが、これがアルコール依存症の治療に有効という報告があります。 お酒を飲まないでいられる期間を増やす効果があるというものですが、ただ、ちょっと一定の結果が出ているわけではないのです。 効果がなかったとする研究結果もたくさんあり、また大量に使うと効果があるという研究結果もあるのですが、大量に使うと眠くなる副作用がかなり出てしまうようです。 そんなわけで、ガイドラインでは、もし他の薬でダメだったら使っても良いという、2番手の薬という位置づけになっています。 ちなみに、日本では筋肉の緊張をとる目的だけで使用が承認されているので、アルコール依存症の治療にはほとんど使われていません。 アルコール依存症の治療ガイドライン徹底解説へ戻る #依存症

ADHDとイライラ
発達障害の一種である注意欠陥・多動性障害、略してADHDは、最近ではだいぶ知られるようになってきました。 子供の頃から集中力が続かない、ミスが多い、落ち着きがない、衝動的で計画性がないなどがADHDの主な症状です。 ADHDの人は、ドパミン神経系やノルアドレナリン神経系といった脳の中にある神経回路の機能が、普通の人よりも弱いことが分かっています。 このため、ADHDの治療には、このような神経回路を刺激する薬、中枢神経刺激薬(もしくは精神刺激薬)を使うことがあります。 中枢神経刺激薬にはいくつか種類がありますが、基本的なメカニズムは、弱っている神経回路を活性化させるというものです。 その結果、集中力が上がったり、ミスをしにくくなったりという効果が出るのです。 しかし、どんな薬にも副作用があります。 中枢神経刺激薬の副作用は種類によっても違いますが、イライラする、怒りっぽくなるといった精神的な副作用が知られています。 今回は、その副作用を調べた研究を紹介します。 Risk of Irritability With Psychostimulant Tr


オピオイド拮抗薬
アルコール依存症の治療ガイドライン解説シリーズ。今回は、オピオイド拮抗薬について解説します。 日本では承認されていませんが、世界的には、オピオイド拮抗薬がアルコール依存症の治療に使われています。 オピオイドとは、アヘンやヘロインなどの麻薬のことで、医療用麻薬にはモルヒネがあります。 モルヒネは強力な痛み止めとして日本でも使われていますね。 こうしたオピオイドは脳の中のオピオイド受容体という部分に作用するのですが、アルコールはオピオイド受容体にも影響を与えるようです。 そして、このオピオイド受容体をブロックする薬を使うと、アルコールをすごく飲みたい状態(渇望)を抑えられることが分かっています。 こうした薬はオピオイド拮抗薬と呼ばれ、ナルトレキソン、ナルメフェンなどがあります。 海外ではオピオイド拮抗薬がアルコール依存症の治療に使われており、断酒する期間を伸ばしたり、飲酒する頻度を減らすといったデータもそろい、アルコール依存症の治療において有効性があるという科学的エビデンスは確立しています。 ただ、前述したように、現在のところ日本では承認されていませ
双極性障害の治療に青色塗料のメチレンブルー
今回は双極性障害の研究についてご紹介します。 引用元:Methylene blue treatment for residual symptoms of bipolar disorder: randomized crossover study. The British Journal of Psychiatry. 2017.(論文タイトル、雑誌名、発表年) こちらは、カナダで行われた研究ですね。 皆さんはメチレンブルーをご存知でしょうか? 聞いている私も、実はこの論文を見るまで知らなかったんですが、とても綺麗な青色の物質で、染料や消毒薬として使われていたもののようです。 この研究では、このメチレンブルーが双極性障害の治療に使えるかどうか調べられました。 双極性障害とは、別名、躁うつ病のことで、うつ状態になったり、躁状態というハイテンションで活動的になったりする症状が出たりする病気です。 時期によって、うつ状態になったり、躁状態になったりするのですが、うつ状態の方が長いと言われています。 うつ状態の時は、気分が落ち込むだけでなく、すごく不安になった