ADHDとイライラ
発達障害の一種である注意欠陥・多動性障害、略してADHDは、最近ではだいぶ知られるようになってきました。
子供の頃から集中力が続かない、ミスが多い、落ち着きがない、衝動的で計画性がないなどがADHDの主な症状です。
ADHDの人は、ドパミン神経系やノルアドレナリン神経系といった脳の中にある神経回路の機能が、普通の人よりも弱いことが分かっています。
このため、ADHDの治療には、このような神経回路を刺激する薬、中枢神経刺激薬(もしくは精神刺激薬)を使うことがあります。
中枢神経刺激薬にはいくつか種類がありますが、基本的なメカニズムは、弱っている神経回路を活性化させるというものです。
その結果、集中力が上がったり、ミスをしにくくなったりという効果が出るのです。
しかし、どんな薬にも副作用があります。
中枢神経刺激薬の副作用は種類によっても違いますが、イライラする、怒りっぽくなるといった精神的な副作用が知られています。
今回は、その副作用を調べた研究を紹介します。
これはメタ解析といって、いくつもの研究データをまとめてから、統計的に解析する研究です。
優れたデータをたくさん集合させて解析するため、統計的にはかなりしっかりした解析ができます。
この研究では32の研究を選抜し、合計3664人の子供のデータを解析しました。
全員が、ADHDの子供です。
これらのデータを解析したところ、メチルフェニデートという中枢神経刺激薬の場合は、イライラがかえって少なくなることが分かりました。
ADHDの子はイライラしやすい場合も多いんですが、それがむしろ減るということです。
逆にアンフェタミンという薬の場合はイライラが増えるという結果が出ました。
同じ中枢神経刺激薬でも違う結果が出たというわけです。
メチルフェニデートは、日本ではコンサータという商品名で、病院で処方される薬です。
こちらを使う分には、イライラの副作用は心配しなくて大丈夫のようですね。
といっても、日本ではアンフェタミンの使用は法的に認められていません。
持っていると覚せい剤を所持しているということで逮捕されてしまいます。
だから、日本では中枢神経刺激薬ではメチルフェニデートの方しか使われていないんですね。
つまり、日本で処方される中枢神経刺激薬であれば、イライラは心配ないということになります。
なお、日本ではADHDの治療薬としてアトモキセチン(商品名はストラテラ)という薬も使われます。
こちらは中枢神経刺激薬ではなく、脳のノルアドレナリンやドパミンを増やすことで、間接的に神経回路を活性化させる薬です。
依存性などの副作用が少ないので、メチルフェニデートよりも、こちらの方がよく使われます。
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