

心のプレバイオティクス
腸の中にいる細菌(腸内細菌)がにわかに脚光を浴びています。腸の中には無数の細菌がいますが、これが我々の腸の具合や体の健康を保っています。このため、腸内細菌を整えるとおなかの調子が良くなるというだけでなく、健康にも良いのではないかと言われ、最近では免疫力を上げるとかいろいろと宣伝されています。さらに、腸内細菌は脳との関係もあるのではないかと最近は研究されており、精神科の研究業界でも注目されてきています。 この辺はマイクロバイオームという単語とも関係してきます。私たちの体には無数の細菌、つまりは微生物が住み着いていて、これが私たちの体を守る働きをしてくれています。こうした無数の微生物たちが作るシステムをマイクロバイオータと呼び、その遺伝子に注目した言葉がマイクロバイオームです。まあ、ちょっと抽象的な概念になるので分かりにくいんですが、ようは体にいる細菌を全部ひっくるめて表現しているという理解で良いと思います。 そうした細菌の中でも腸の細菌が注目を浴びているのです。今回は、腸内細菌を整えると不安やうつ症状などを改善させるかもしれないというアイルランドの

前頭側頭型認知症は精神疾患と区別がつきにくい
今回は認知症と精神疾患の見分け方について話します。「認知症と精神疾患なんて全然違うものじゃないか」と思われる人も多いかもしれません。確かに、物忘れが増えたり、記憶力が落ちたりする認知症という病気と、気持ちが落ち込んだり、不安になったりするような精神疾患では、どこが同じなんだと疑問に思うのも無理はないでしょう。ただ、それはあくまでちまたにあふれるイメージです。実際は、認知症ではさまざまな精神症状が出ますし、精神疾患でも記憶力が落ちるなど認知症に近い症状も出ます。両者の症状は時にとても近くなるのです。 そこで、今回はこの見分け方についての研究を紹介します。認知症の中でも前頭側頭型認知症というタイプは、精神科的な問題が多いことで有名です。性格が変わって横暴、暴力的になったり、周囲に対して無関心になり、人目を気にせず変な行動をとったりしてしまいます。変な行動、異常行動という症状が強いので、精神的におかしくなったのではないかと思われ精神科に受診するケースは珍しくありません。この前頭側頭型認知症は、名前の通り認知症の一種なのですが、お年寄り、老年期で発症する

休職した同僚や部下にどう対応すれば良いのか?
職場で何らかのストレスを抱えている人は多いと思います。仕事が上手くいかない、高いスキルを要求される、締め切りが迫っている、などといった仕事の内容に伴うストレスもあると思います。また、上司がパワハラをする、同僚からいじめにあっているなど人間関係のストレスもあると思います。 働く人のストレスは様々だと思いますし、何のストレスもない状態では良い働きもできないでしょう。例えば、締め切りがなければいつまでたってもやる気が出ないこともあると思います。ある程度のプレッシャーがあって初めて動く人も多いと思います。 しかし、過剰なストレスは人間のパフォーマンスを下げます。焦りすぎて頭が働かなくなった経験を持つ人はたくさんいるでしょう。また、ストレスが、適応障害、不安障害やうつ病などのメンタルヘルスの問題を引き起こすこともあります。こうなると治療に時間がかかりますし、場合によっては病気休暇を申請する、つまり、休職する必要が出てくるかもしれません。 社員が休職してしまっては、休んでいる本人だけでなく会社全体としてもマイナスです。こうならないように、ストレスのマネジメン

多発性硬化症とうつ症状と脳の炎症
ばい菌が体の中に入ると炎症が起きて、感染した部分が腫れたり、熱を持ったりします。人間が持つ免疫による反応です。こうした炎症は色々なケースで起きます。特に細菌やウイルスに感染しなくても、自分自身で自分の体の中に炎症を起こしてしまう病気もあり、自己免疫疾患などと呼ばれます。例えば、関節リウマチでは関節に炎症が起きますが、自己免疫疾患の中には脳や神経に炎症が出る病気もあります。 このように、様々な炎症があるのですが、脳の炎症、神経の炎症が精神疾患に関わるという仮説があります。特に、気持ちが落ち込んだり、体が疲れたり、だるくなったりという症状と関わると言われています。これらは、うつ病の症状です。つまり、脳に炎症が起きて、うつ病と同じ症状が出るということです。 この、うつ病の神経炎症仮説は世界中で研究が進んでいます。今回は、多発性硬化症という脳や脊髄の神経に炎症が起きる病気とうつ病の関係を調べた研究論文を紹介します。 引用文献:Neuroinflammation drives anxiety and depression in relapsing-remi