心のプレバイオティクス
- Tomoyuki Saito
- 2017年11月28日
- 読了時間: 3分

腸の中にいる細菌(腸内細菌)がにわかに脚光を浴びています。腸の中には無数の細菌がいますが、これが我々の腸の具合や体の健康を保っています。このため、腸内細菌を整えるとおなかの調子が良くなるというだけでなく、健康にも良いのではないかと言われ、最近では免疫力を上げるとかいろいろと宣伝されています。さらに、腸内細菌は脳との関係もあるのではないかと最近は研究されており、精神科の研究業界でも注目されてきています。
この辺はマイクロバイオームという単語とも関係してきます。私たちの体には無数の細菌、つまりは微生物が住み着いていて、これが私たちの体を守る働きをしてくれています。こうした無数の微生物たちが作るシステムをマイクロバイオータと呼び、その遺伝子に注目した言葉がマイクロバイオームです。まあ、ちょっと抽象的な概念になるので分かりにくいんですが、ようは体にいる細菌を全部ひっくるめて表現しているという理解で良いと思います。
そうした細菌の中でも腸の細菌が注目を浴びているのです。今回は、腸内細菌を整えると不安やうつ症状などを改善させるかもしれないというアイルランドの研究を紹介します。ちなみに、これはネズミの動物実験レベルの話ですから、未来の可能性を追求する研究という風に理解してください。
引用文献:Burokas et al. Targeting the Microbiota-Gut-Brain Axis: Prebiotics Have Anxiolytic and Antidepressant-like Effects and Reverse the Impact of Chronic Stress in Mice. Biol Psychiatry. 2017(著者、論文タイトル、雑誌名、発表年)
腸内細菌はオリゴ糖で整えることができると言われ、これはプレバイオティクスなどとも呼ばれます。オリゴ糖には色々な種類がありますが、でよく使われるものはフルクトオリゴ糖とガラクトオリゴ糖です。この研究では、ネズミ(マウス)に、フルクトオリゴ糖とガラクトオリゴ糖を3週間にわたって与えます。さらに、一部のネズミたちには、あえて心理的ストレスも与えます(ちょっとかわいそうですが)。そして、ネズミの行動を調べるとともに、腸内細菌(マイクロバイオータ)や血液中のコルチコステロンというストレスに関わるとされるホルモンなど、体の具合をあれこれと検査されました。
すると、フルクトオリゴ糖とガラクトオリゴ糖の両方を与えると、これらを与えなかったネズミよりも不安やうつ症状を表すような行動が少ないという結果が得られました。また、こうしたオリゴ糖を与えた方が、ストレスホルモンであるコルチコステロンも減少したとのこと。どうやら、オリゴ糖を与えると、脳の海馬や視床下部といった感情機能に関係の深い場所で遺伝子の発現が変化することも分かりました(遺伝子は身体の設計図ですが、いつも全てが使われているわけではなく、時と場合によって使われる場所が変わります。オリゴ糖でこれが変化したということです)。これだけで何か結論を出すところまではいきませんが、どうやらオリゴ糖は脳やホルモンバランスに影響し、精神的に良い効果がありそうという仮説を導き出すことはできます。もう少し研究を進め、最終的には人間の脳やホルモンバランスに良い効果があるのか、ストレスを和らげたりするのかどうかが分かってくると良いですね。
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