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統合失調症の脳画像から多様性と共通点を探す

  • 執筆者の写真: Tomoyuki Saito
    Tomoyuki Saito
  • 2017年12月19日
  • 読了時間: 3分


多型な統合失調症

統合失調症は幻聴、幻覚や妄想といった症状の出る精神疾患です。治療としては脳のドーパミン系の神経の興奮を抑える薬である抗精神病薬を使います。この治療法からも分かる通り、統合失調症は脳の病気です。もちろん、ストレスが良くないとか、心理的な原因も少なからずあるのですが、遺伝性もあり、生まれながらの脳の病気という側面も強いです。

脳の病気なのであれば、脳の検査により診断するのかと思う方も多いと思いますが、現段階ではしっかりとした統合失調症の検査はありません。例えば脳梗塞といった脳の病気では、脳のMRIという脳画像検査を使い診断します。このように生物学的な部分を調べる検査をバイオマーカーと呼びますが、統合失調症のバイオマーカーはまだ研究段階であり、しっかりとしたものは使われていません。

統合失調症のバイオマーカーの候補となっている検査は色々とあるのですが、その1つが先ほども書きましたが脳のMRI検査です。これは、磁気の力を使い脳の構造や機能を読み取ることができる装置です。

統合失調症のMRI検査の論文はたくさんあるのですが、今回は数々の論文をまとめたもの、といってもまとめサイトでなく統計学的な処理をしてまとめたメタ解析という手法の論文が出ましたので、その内容を紹介したいと思います。これはイギリスの研究論文ですね。

MRIは色々なことを調べられますが、よく行われる調べ方が脳の体積を測定するという手法です。統合失調症では脳の一部分の体積に変化が生じると言われ、多くの研究者が調べてきました。ところが、その結果は様々です。そもそも、統合失調症という病気自体が単一の病気ではなく、色々なタイプ、型に分かれると考えられています。もっと言えば、色々な病気の集合体です。つまり、幻聴や妄想が出る病気は色々とあり、それらをまとめて統合失調症と呼ぶという捉え方ですね。このため、脳の体積を調べても多様な結果になってしまいます。このメタ解析では、脳の体積の多様性を調べるため、さまざまな論文を調べ上げ、変動率を計算しています。

多くの論文がありますが、その中でも初発の統合失調症の人、つまり統合失調症になったばかりの人たちで、MRIを使い脳の体積を調べた論文が集められました。統合失調症になってから何年も経過してしまうと、年齢の影響や向精神薬の影響などが脳に出ている可能性があり、統合失調症のせいで脳の体積が変化したのか、他の原因か区別がつきません。統合失調症になったばかりであれば、他の原因の可能性が少なくなるので、純粋に統合失調症について調べることができるわけです。

最終的にこの研究で解析された論文数は108本でした。患者さんの総数は3901人です。数値は比べないと大きさが分かりませんんので、健常者の人たちのデータもとって比べます。この方法で脳体積の多様性を調べると、統合失調症の人たちの被殻、側頭葉、視床、第三脳室という部分では、健常者の方よりも体積の変動率が高く、ばらつきが強いという結果が出ました。一言に統合失調症といっても、この辺の脳は人それぞれかなり違うということです。こうした違いが、統合失調症の人たちの症状の違いや治りにくさの違いなどと関係しているのかもしれません。

また、前部帯状回は健常者よりもばらつきが低い結果でした。つまり、統合失調症であれば前部帯状回の体積が近いということであり、前部帯状回が様々なタイプの統合失調症に共通するコアの部分だと推察できます。

このように、統合失調症はなぜ多様で幅があるのか、そうはいっても共通する症状があるのはなぜかなど脳のMRIから考察することができます。これが、たくさんのデータを集める力ですね。データサイエンスが精神疾患の科学的な解明に貢献するのです。

 
 
 

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