死にたい気持ちをあっという間に減らす薬「ケタミン」
- Tomoyuki Saito
- 2018年2月17日
- 読了時間: 3分

日本語では、嫌なことを「死」という言葉で表現することが多いと思います。例えば、夏の非常に暑い日に「死ぬほど暑い」と言ってみたり、恥ずかしい失敗をした時に「恥ずかしくて死にそう」と言ってみたり。辛い時に、「もう死にたい」と言う人も多いのではないでしょうか。かつて切腹という文化もあった国ですので、死については身近な部分もあるのかもしれません。
しかし、本気で自殺を考えるようだと大変です。例えば、うつ病になり正常な判断ができなくなると、辛さから逃れるために本気で自殺を考えることがあります。または、死にたいという気持ちが、勝手に湧き上がってきて止められないという場合もあります。これは、普通の人が死について考える状況とは違い、うつ病という病気の影響を受けての考えになります。冷静に自分の死について考えているわけではありません。あくまで症状です。この症状は、専門用語を使うと、希死念慮とか自殺念慮などと言います。
こうした、うつ病の影響による希死念慮、つまりは死にたい気持ちは、治療により改善が期待できます。ただし、うつ病の治療は何週間も時間がかかるのが一般的です。長い時間、死にたい気持ちが続くのは危険です。時間が経つにつれて、実際に死んでしまう可能性がどんどん上がっていってしまいます。大切な命を守るためにも、できるだけ早く治療する必要があるのです。
今回は急速に死にたい気持ちを治す治療についての研究を紹介します。
ケタミンは速やかにうつ病を改善させる効果があると言われてきました。しかし、一言にうつ病と言っても、眠れないとか体が怠いとか色々な症状があります。今回の研究は、うつ病の中でも死にたい気持ちに的を絞っているのが特徴です。この研究には80人のうつ病患者さんが参加しました。皆さんが、死にたい気持ちが強い方です。この方々に、ケタミンもしくはミダゾラムという薬のどちらかを注射で投与します。ミダゾラムはベンゾジアゼピン系の薬です。ベンゾジアゼピンには不安を取る作用もありますが、麻酔としての作用もあります。ミダゾラムは麻酔で使われることが多いですね。ケタミンを打つか、ミダゾラムを打つかは医師も患者も決められません。くじ引きのように、全くランダムに決まります。こうすることで、研究結果を操作したり、バイアスができたりしないようにしているのです。
さて、投与して24時間後の結果ですが、ミダゾラムよりもケタミンを打った人の方が、死にたい気持ちが改善していたことが分かりました。ミダゾラムによって死にたい気持ちが改善した人は全体の30%だったのに対し、ケタミンは55%と明らかに多かったのです。残念ながら全員ではないものの、たったの24時間で改善させるとは驚きです。しかも、この効果は一時的なものではなく、その後の観察で6週間は続いたことが確認されたようです。
自殺予防の観点からは、いかに早く治療するかが重要なテーマです。様々な研究結果によりケタミンの力が実証されつつあるので、日本でも早くうつ病に使えるようになれば良いですね。今のところは、麻酔薬として使うことしかできませんので。
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