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摂食障害とオキシトシン


今回は神経性無食欲症(摂食障害の一種)の研究論文を紹介します。

アメリカのハーバード大学が中心になって行った研究です。

神経性無食欲症とは、簡単に言うと、太るのが怖くて過剰なダイエットを行い、過剰に体重が減ってしまう、ガリガリに痩せてしまうといった精神疾患です。

若い女性に多いですね。

実はこの病気になると、うつ病や不安障害になりやすくなります。

この研究では、その原因がホルモンの観点から調べられています。

この研究で注目されているのは、

オキシトシンというホルモンです。

ホルモンとは、血液中を流れる物質で、離れた臓器に情報を送ったり、体の機能を調節したりする役割があり、なかには脳や精神状態と強く関わるホルモンもあります。

オキシトシンは、脳の下垂体という場所から血液中に分泌されているホルモンです。

オキシトシンは、本当に色々な役割を持つホルモンで、女性ですと、子供を産む時に子宮を収縮させたり、赤ちゃんに授乳する時に乳を分泌させるなどの役割があります。

最近だと愛情などの感情面にも関わることが話題になっています。

そんな多彩な役割を持つオキシトシンですが、他にも役割があり、食欲を調節したり、不安やうつ症状を弱める効果もあるそうです。

オキシトシンのこういった役割を聞くと、神経性無食欲症、不安障害、うつ病といった精神疾患にも関係していそうな気がしますよね。

この研究を行った人たちも、そんな考えを抱いて調べたそうです。

この研究には、18歳から45歳の女性79人が参加されました。

女性ばかりなのは、やはり摂食障害は女性に多い病気だからでしょう。

この79人のうち、19人が神経性無食欲症の患者さんたちで、かなり体重の低い人たちです。

そして、26人がある程度良くなってきている神経性無食欲症の患者さんで、体重が戻ってきている人たちです。

残りの34人は病気の無い健康な女性になります。

健康な方が参加するのを変に思う方もいるかもしれませんが、これは後で、健康な人と患者さんとでデータを比較するために必要なんです。

この参加者の皆さんから、精神疾患の有無と、血液中のオキシトシンの値が検査されました。

すると、神経性無食欲症の患者さんの中でも、ある程度良くなってきた人たち、体重が増えてきた人たちが、オキシトシンと強く関わっていることが分かりました。

オキシトシンの値が高いと、食事が普通にできていて、不安やうつ症状は低かったそうです。

逆に言うと、まだ過剰なダイエットをしていたり、不安症状やうつ病の症状があったりする人たちは、オキシトシンの値が低かったということです。

これは、体重が低くて症状の重い神経性無食欲症の患者さんでは見られない傾向だったようで、治りかけの人たちに特徴的な結果だったようですね。

神経性無食欲症から回復する時は、当人からすれば、せっかく減らした体重が増えていくわけで、かなり心理的には嫌な感じがするものです。

この体重が増えていく過程で、情緒が不安定になり、うつ病や不安障害になる方も珍しくありません。

こうした、神経性無食欲症になった後に、治療して体重が増えていく、治っていく過程で、オキシトシンというホルモンが精神状態と強く関わっているのかもしれませんね。

オキシトシンは自閉症との関わりも注目されており、精神医学領域ではしばらく話題になりそうです。


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