自律神経失調症と適応障害
自律神経は内臓を動かしたり血圧を調整したりする神経です。この自律神経が時に狂ってしまい、心臓や胃腸なんかに症状が出ることがあります。自律神経の調子が悪くなるので、俗に自律神経失調症などと言ったりもしますが、この病名だけつけても、ただ症状そのままの名前をつけているだけなので意味がありません。自律神経の調子が悪くなった原因が大事になります。
今回は、その原因の一つである適応障害について説明します。自律神経の調子が狂う原因の一つがストレスです。もう少し言うと、不安や恐怖などといった感情の反応で自律神経の症状が出ることがよくあります。例えば、会社で上司に激しく怒られ、次の日から会社に行くのが怖くなる。すると、会社に行く前に吐き気がしたり、心臓がドキドキしたり、冷や汗が出たりする。こんな具合に精神的なストレスが強くなると、不安や恐怖といった負の感情が出てきて、同時に自律神経の症状が出ることはよくあります。これを適応障害と言います。うつ病よりも軽く、短期的で一過性の病状の場合に適応障害という病名をつけます。
適応障害の特徴は、ストレスとなる原因が明らかなことです。この場合、まずはよく休むことが大事で、ストレスの原因から遠ざかれば数週間で症状が落ち着くことが多いです。このような適応障害という病気になってしまうと、自律神経のバランスが崩れることがあります。まあ、自律神経失調症は正式な病名ではありませんが、自律神経失調症という言葉を使うのであれば、適応障害が原因で自律神経失調症になったと考えることができます。しかし、この大元の原因は自律神経ではありません。あくまでストレスです。働いている人は職場の環境にストレスがあったりしますし、専業主婦の方でも育児に関する出来事で辛くなったりすることもあるでしょう。夫婦関係で悩んだり、友人関係で悩んだり、遺産相続で親戚と揉めたりしても、人間は大きなストレスを感じます。このような強い精神的ストレスのあった後は、様々な精神的苦痛が出ます。しかし、ストレスの大元の問題が解決されたら、精神的には安定します。適応障害から自律神経の症状が出た場合も、ストレスの大元が解決されたり、そこから離れたりすると自律神経の症状は改善します。結果として生じた自律神経症状を改善させるよりも、大元のストレスを解決することの方が大事なのです。それが難しければ、気持ちを落ち着かせる薬を使うこともできます。しかし、薬を使うとしても、自律神経を調整するのではなく、精神の安定を目指すのが先です。
適応障害について詳しく知りたい方は過去の記事「適応障害の治療」で紹介していますのでご覧ください。
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