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アルコール依存症と他の精神疾患



アルコール依存症と他の精神疾患

アルコール依存症は精神疾患の一つなわけですが、他の精神疾患もアルコール依存症と一緒に見られることがあります。

今回は、アルコール依存症と一緒に存在する他の精神疾患についてご紹介します。

具体的には、うつ病、双極性障害、不安障害、統合失調症の四つです。

まずはうつ病から説明しましょう。

アルコール依存症の人は、普通の人よりも2倍ほどうつ病になりやすいそうです。

実は、アルコールによりうつ症状が出ると考えられています。

つまり、アルコール依存症になってから、アルコールの影響でうつ病になってしまう人がいるのです。

この場合、原因となるアルコールをやめれば、うつ病も良くなることが多いです。

しかし、その逆もあります。

先にうつ病になってから、辛さを紛らわせるためにアルコールを多く飲むようになり、アルコール依存症になってしまうというように、アルコール依存症になる前にうつ病になる人もいるのです。

どちらかというと、うつ病がアルコール依存症の原因になってしまうケースです。

この場合は、アルコールをやめても、うつ病の症状は続くので、しっかりうつ病の治療もしないといけません。

アルコール依存症があっても、通常のうつ病と同じ治療をします。

しかし、アルコール依存症とうつ病の両方がある場合、抗うつ薬(うつ病の薬)が効きにくいというデータがあります。

なので、薬の治療だけでなく認知行動療法などの精神療法、心理カウンセリングなどを組み合わせて治療していくのが良いでしょう。

次は双極性障害です。

双極性障害とアルコール依存症の関係は深く、双極性障害の人は通常の方よりも6倍もアルコール依存症になりやすいそうです。

双極性障害とは、気分が落ち込むうつ病の症状だけでなく、気分がハイになったり怒りっぽくなったりする躁病の症状も出る病気です。

気持ちが落ち込むとお酒を飲みたくなる人もいるでしょうが、気分がハイな時に酒を飲みたくなる人も多いと思います。

だからかは分かりませんが、双極性障害の人はアルコール依存症になりやすいのは事実でしょう。

この場合は治りにくく、薬で治療しようにも、ちゃんと薬を飲んでくれない人が多いようです。

双極性障害の治療薬は色々とあるのですが、その一つにバルプロ酸という薬があります。

双極性障害とアルコール依存症の両方を持つ人に、このバルプロ酸を使うと、双極性障害の症状だけでなく、合併するアルコール依存症の方も良くするという研究報告があるようです。

また、クエチアピンという薬も双極性障害の治療に使う薬ですが、この薬は双極性障害の方には効くけれど、アルコール依存症の方には効かなかったという報告があります。

ただ、どちらもデータとしては不十分なので確かなことは言えません。今後の研究報告を待ちましょう。

3番目は不安障害です。

不安障害は、パニック障害や社交不安障害など、不安が主体な精神疾患の総称です。

アルコール依存症の人は、普通の人よりも2倍ほど不安障害が多いそうです。

しかし、アルコール依存症の人に強い不安感が見られた場合、アルコールの離脱症状でその不安感が出ている可能性もあります。

アルコールの離脱は、なんとも落ち着かず不安になるものなんです(詳しくはこちらの記事まで)。

このため、不安障害とアルコール依存症の両方があるのか、アルコールの離脱で不安になっているのか区別するのは難しいとされます。

不安障害の治療は、うつ病と似ていて、抗うつ薬や認知行動療法などで治療します。

アルコール依存症と不安障害の両方がある場合も、抗うつ薬や認知行動療法などの通常の不安障害の治療が有効と言われてます。

最後は統合失調症について説明します。

統合失調症の人の多くはアルコールの問題を抱えているという統計があります。

統合失調症は、幻聴や被害妄想などの精神症状が出る病気で、青年期を中心に発症し、一生続く病気です。

他の精神疾患よりも症状が強く、入院するケースも多いですね。

日本で精神科に入院している人の大半が統合失調症の人です。

脳のドパミンの作用をブロックする抗精神病薬という薬で治療します(今の所、抗精神病薬を全く使わない治療はありません)。

統合失調症の人が依存症になると、せっかく良くなった精神症状が悪化したり、そのためまた入院しないといけなくなったりします。

抗精神病薬の副作用(体が動きにくくなったり、舌が勝手に動いたりなど)も出やすくなります。

そのためか、薬をちゃんと使わなくなってしまうが増えます。

一番困るのは、統合失調症の人が依存症になると、自殺する危険性が高まったり、暴力を振るう可能性が増えることです。

ですから、しっかりと治療しないとなりません。

統合失調症の治療は、先ほども言ったように、抗精神病薬という薬を使うのですが、抗精神病薬には新しい非定型抗精神病薬(第二世代抗精神病薬とも言います)と、古くからある定型抗精神病薬があります。

統合失調症でアルコール依存症もある場合、古い定型抗精神病薬よりも、新しい非定型抗精神病薬の方が依存症に対する治療効果が高いことが分かっています。

また、アルコール依存症の薬であるナルトレキソンとジスルフィラムは有効かもしれないという報告もありますが、まだ十分なデータではないようです。

いかがでしたでしょうか。

アルコール依存症は一つだけでなく、色々な精神疾患と関係することが分かっていただけたら幸いです。

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