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電気けいれん療法と認知症



電気けいれん療法

電気けいれん療法という治療をご存知でしょうか? 電気けいれん療法とは脳に電気を流す治療法のことで、精神疾患の治療に使われます。脳に一定以上の電流を流すと、てんかん発作という症状を作り出すことができます。てんかん発作とは脳の細胞が電気的に興奮して、発作的に全身がけいれんしたり、意識を失ったりする現象です。ちなみに、てんかん発作が何度も続く病気をてんかんと呼びます。

このてんかん発作を脳に電気を流すことで人工的に作り出すことができます。これにより精神症状の改善が期待できるのです。特に、うつ病への治療効果は高く、重症のうつ病に対しては抗うつ薬などの薬物療法よりも有効性が高いのです。

しかし、かつての電気けいれん療法は、非常に副作用が強いものでした。電流が強すぎて電極を当てた部分の頭皮に火傷を起こしたり、手足がけいれんしてあちこちにぶつかり怪我をしてしまったりなど、多くの問題がありした。そもそも感電すると痛みも伴います。そのため色々と改良が施され、今では副作用はかなり軽減され安全性が高まりました。また、全身麻酔をすることで苦痛なく処置ができるようになりました。これを修正型電気けいれん療法などと呼びます。

ただ、未だに懸念されるのは、認知機能障害、つまりは認知症の症状です。昔の電気けいれん療法では、この副作用も問題になりました。現在の電気けいれん療法はかなり改良されました、修正型電気けいれん療法により認知症のリスクが上がるかどうかは、あまり調べられていません。そこで、北欧の国デンマークで、現在の電気けいれん療法により認知症のリスクが上がるかどうかが調べられました。今回は、こちらの調査報告を紹介します。

こちらの研究では、2005年から2015年にかけて病院に受診した気分障害(うつ病や双極性障害などの病気が含まれる総称)の患者さんが調査対象になりました。そして、認知症になるかどうかが2016年まで追跡調査されました。人数としては、合計168,015人の人が参加したそうで、そのうち3.5%にあたる5,901人の人が電気けいれん療法を受けていたそうです。

この調査結果によると、電気けいれん療法を受けた後に認知症になった人の割合は3.6%でした。一方で、電気けいれん療法を受けない人たちの中で認知症になった割合は3.1%であり、統計学的に見ても差はありませんでした。また、年齢別の解析結果は特に印象的でした。なんと、70歳以上の人では、電気けいれん療法を行った方が認知症になる割合が少ないという結果が出たというのです。ただ、計算法を変えると大きな変わりはないという結果にもなったので、そこまでの意味はないのかもしれません。しかし、少なくとも、最近の方法で電気けいれん療法を行ったからといって、認知症になったりはしないようです。

治療には色々なものがありますが、効果と副作用の両方を考えることは大事です。電気けいれん療法の副作用について、大丈夫かどうかが分かれば、安心して使うこともできます。こういった治療の根拠となる研究は大事ですね。

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