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うつ病ガイドライン徹底解説8 うつ病に関係する精神疾患



うつ病ガイドライン徹底解説

うつ病になると、他の精神疾患もなりやすくなります。

こうした他の精神疾患が一緒にあるケースでは、治療方針が変わることもあるので、確認する必要があります。

可能性が高いものは、パニック障害や社交不安障害(社交恐怖)、強迫性障害、アルコール依存症、薬物依存症などです。

また、自閉症スペクトラムやADHD(注意欠如・多動性障害)などの発達障害と言われるものや、境界性パーソナリティ障害、依存性パーソナリティ障害、強迫性パソナリティ障害などのパーソナリティ障害と呼ばれるものなども、一緒に起こることが多い精神疾患になります。

こうした他の精神疾患があると、うつ病が治りにくかったり、重症化しやすかったりしますので、注意が必要です。

前回の自殺のリスクの説明でもお伝えしましたが、不安障害や依存症などは自殺のリスクを高める精神疾患です。

しっかりと確認する必要がありますが、先に「うつ病」と診断されてしまうと、なかなか一緒にある症状まで目が行き届かなくなり、見逃されてしまうこともあります。

また、これは本当は別の病気なんですが、双極性障害という病気もあります。

これは、うつ病の症状と、躁病、躁状態といって、ハイテンションになったり、活動的になったりする状態の両方が出てくる精神疾患です。

交互に症状が出ることもあれば、ほぼ同時期にうつ状態の症状も、躁状態の症状も出てくることもあったりと、色々なタイプがあります。

この、双極性障害によるうつ状態と、うつ病は見分けるのがとても難しいのです。

症状にはほとんと違いがありません。

見分けるためには、過去に躁状態となったことがあるかどうか確認する必要がありますが、躁状態となった場合、自分では気づきにくいという問題があります。

なにせ、躁状態の時は、気分が良いし、いつもよりも元気な状態なので、病気だと気づきにくいのです。

だから、患者さんとしては問題ないと思って、医者に症状を伝えないことがよくあります。

このように自分では気づきにくい症状ですから、必要に応じて、例えば、家族や友人などに、客観的に見てどうだったかと聞き、躁状態の確認をする場合もあります。

なぜ、こうまでして見分ける必要があるかというと、治療法が全然違うからです。

うつ病に効果がある抗うつ薬と呼ばれる薬は、双極性障害の人が飲むと、かえって症状が悪くなったり、一度良くなってもすぐに再発したりします。

双極性障害の場合は、炭酸リチウムや、てんかんという病気にも使えるバルプロ酸やカルバマゼピン、統合失調症という病気にも使えるアリピプラゾールやオランザピンという薬などを使います。

このように、治療法が全然違うので、しっかり見分けないといけないわけです。

なお、双極性障害のうつ状態と普通のうつ病は見分けるのが大変だと言いましたが、双極性障害のうつ病を疑うサインというのもあります。

例えば、うつ病では眠れなくなる人が多いんですが、眠気が強くなってたくさん寝てしまうという場合は、双極性障害のうつ状態の可能性を考えます。

他には、うつ状態になった時に食欲が増えてしまう人、5回以上もうつ病の再発を繰り返している人や、25歳以下でうつ病になった人なども双極性障害の可能性が高くなります。

ちょっと難しい名前のものでは、精神病症状を伴ううつ病という場合も、双極性障害を疑うサインになります。

この「精神病症状」とは、幻覚や妄想などのことで、うつ病では主に妄想が出ることが多いです。

典型的な例としては、本当はある程度の貯金や収入があるのに「お金が全くない」と思い込む貧困妄想と呼ばれるものや、体の具合は悪くないのに「がんになってしまった」などと重い病気になったと思い込んでしまう心気妄想などがあります。

こうした、双極性障害を疑うサインは、診断する基準ではなくて、あくまで可能性を疑うサインに過ぎません。ただ、こうしたサインが診断の助けになることもありますので、確認が大事です。

また、統合失調症という幻覚や妄想などが出る病気でも、初期にはうつ病に似た症状が出る場合があり、見分けにくいことがあります。

このように、うつ病を診察する時には、他の精神疾患についても、色々と可能性を考える必要があります。

さて、次は、具体的に治療の計画を立てる段階に移り解説していきます。

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