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双極性障害の治療ガイドラインの解説



双極性障害の治療ガイドラインの解説

双極性障害とは、かつて躁うつ病と呼ばれてきましたが、主にうつ病の症状と躁病の症状が出る病気です。うつ病は聞いたことがある人も多いと思いますが、気分が落ち込んだり、何もする気が起きなくなったりする病気です。これは、ともすれば拡大解釈されます。誰だって落ち込むこともあれば、やる気がなくなることもあります。「そうなると、誰でもうつ病?」ということになりますが、もちろん、そんなはずありません。うつ病と定義するには、ほぼ毎日症状が続かないといけません。しかもほぼ一日中です。これが2週間以上続いて、初めてうつ病と診断される基準を超えます。誰だって落ち込むことはあると思いますが、数日すれば気分は落ち着いてきます。しかし、うつ病の場合はなかなか気持ちが改善せず、嫌な気分が続くのです。

うつ病は、気持ちが落ち込むだけの単極性の人もいますが、躁病の症状も出てくる双極性障害の人もいます。この単極性のうつ病と双極性障害のうつ病は、症状はほぼ同じなので区別はつきません。双極性障害の診断に大事なのは、躁病(躁状態)の存在です。これは、お酒を飲んだ時のように気分が高揚したり、やる気がどんどん出てきたり、頭の中にアイディアがたくさんあふれてきたりと、エネルギーに満ちあふれた状態を言います。この躁病は、急に出てくることもあれば、うつ病の症状が治ってから出てくることもありますし、うつ病の症状に混じって出てくることもあります(これを混合性の特徴があるとか言いますが、ここでは混合うつ病と読んでます。混合うつ病についての解説はこちらの記事まで)。1日のうちでも、気持ちが上がったり、下がったりと、躁病になったり、うつ病になったりする人もいます。また、重度の躁病になる人もいれば、躁病の症状が軽い人もいます。つまり、一言に双極性障害と言っても個性があるということです。

双極性障害で、躁病の症状が重い人を1型、軽い人を2型と定義します。躁病の症状が重症とは、簡単にいうと入院するほど激しいというイメージです。躁病が酷くなると、強く興奮するようになり、妄想的な発言をすることもあります。大声を出したり怒鳴ったりするので、周りの人にも多大な迷惑をかけます。すると、その時は本人は困っていないことが多いですが、その人の人間関係が破綻してしまうので、後に我に返った時に困ることになります。また、お金を使いすぎる人も多いので、その場合は生活費が無くなり困ることになります。このように、あまりに人生への支障が大きい場合は入院した方が良いでしょう。これが重症の躁病であり、双極性障害の1型の症状になります。しかし、この1型、2型というのは、あくまで躁病の重症度で分けているだけですから、うつ病の症状が軽いか重いかは考慮されません。双極性障害は、躁病だけでなく、うつ病の症状が出る病気です。躁病の症状が軽くても、うつ病の症状が重ければ辛いものです。なので、単純に1型の双極性障害が重症で、2型は大したことのない病気と考えるのは間違いです。双極性障害の人の症状を長きにわたって見てみると、躁病の症状よりも、うつ病の症状が出ている期間の方が長いです。なので、時間の長さだけで見れば、双極性障害のメインは、躁病ではなくうつ病になるのです。

また、治療によって躁病もうつ病もなく、安定した時期になっていきます。この安定した時期を長く続けるのが治療の目標です。しかし、油断はできません。なぜなら、放っておくと症状は再発する可能性が高いからです。再び、うつ病になったり、躁病になったりしてしまいます。ですから、この安定した時期では、再発を防ぎ、できるだけ安定した状態を維持する維持療法が大切になってきます。

さて、この双極性障害の原因は複数あると考えられています。遺伝子にも原因はありますし、脳の形状や機能の異常が双極性障害の原因とも考えられています。これらは、生物学的な原因ですね。これだけではなくて、悩み、葛藤といった心理学的な要因も双極性障害の原因になります。また、人間関係、仕事の問題、住んでいる地域の問題など、自分の周りにあるものからのストレスも双極性障害の症状の原因になります。これらは社会的な要因です。このように、生物学的、心理学的、社会的な要因が合わさり、双極性障害が出てくる生物・心理・社会モデルなどと呼びます)と考えられています。ただ、心理学的、社会的な要因だけでは双極性障害にはならないので、生物学的な要素が強いとは言えます。この辺りは、今後の研究でさらに分かってくるでしょう。

さて、次から双極性障害の治療について解説していきます。なお、参考とするガイドラインは、日本うつ病学会の2011年のガイドラインや、世界生物学的精神医学会のガイドラインなどです。


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