• Tomoyuki Saito

性的倒錯の治療ガイドラインの徹底解説


異常性欲などとも言われますが、性的倒錯(小児性愛性的サディズムなど)の治療についてガイドラインを元に解説します。

元にするガイドラインは、世界生物学的精神医学会が2010年に発表したものです。

参考文献:The World Federation of Societies of Biological Psychiatry (WFSBP) Guidelines for the biological treatment of paraphilias. The World Journal of Biological Psychiatry. 2010.

性的倒錯とは、通常の性欲や性行為とは違った空想にふけったり、性的行為に及んだりするもので、男性に多い精神疾患です。

例えば、小児性愛(いわゆるロリコンですね)、窃視症(いわゆる、のぞきです)、露出症(他人に下半身を見せるなど)、フェティシズム(ちまたで言われるフェチというレベルではなく、例えば男性が女性の下着をつけて性的行為に及ぶなど)、性的サディズム(性行為の最中に暴力を行うなど)などなど、色々とあります。

こうした性的倒錯は、単に心に秘めているだけだったり、プライベートの範囲でパートナーの同意の下に行われているレベルなら良いのですが、場合によっては性犯罪につながることもあるため、注意が必要です。

世界生物学的精神医学会の治療ガイドラインでも、性犯罪のリスクなどを考えて治療を選ぶようにと書かれています。分かりやすく、6段階のレベル別になっていますね。これから紹介していきます。

なお、日本では、現時点で、性的倒錯の治療として正式に国の認可を得た薬はありません。下に紹介する薬の中には日本にある薬もありますが、性的倒錯の治療として使うことが認められていないのです。なので、あくまで海外の話だと考えてください。

また、原文は英語で、専門用語も多用されていますが、誰にでも分かるようにするため、かなり意訳します。ちゃんと知りたい方は、世界生物学的精神医学会のホームページで無料公開しているので、そちらを読むことを勧めます。

<レベル1>

対象:

・性的倒錯の空想や行為などはあるけれども、通常の性行為もできていて、普通の性欲もある人

治療:

・精神療法(心理療法・心理カウンセリングとも言われる種類の治療です。性的倒錯に有効なのは、基本的に、認知行動療法という治療になります)

<レベル2>

対象:

・性的倒錯の症状が軽い人

・手に触れない類の性的倒錯で、性的暴行のリスクは低い人(例えば、露出癖はあるけどレイプまではしない人など)

・レベル1の治療で効果不十分の人

治療:

・強迫性障害(何度も手を洗ったり、確認したりしてしまう精神疾患です)の治療に準じて高用量のSSRI(抗うつ薬の一種)を使う

<レベル3>

対象:

・かなり性的倒錯の症状が強い人

・実際の性行為まではいかなくても、手で触れるような性的倒錯の行為に及ぶ人

・性的サディズムまではない人

・レベル2の治療である高用量のSSRIを4-6週間使っても効果不十分の人

治療:

SSRIに、少量の男性ホルモンを抑える薬(例えば、シプロテロンを1日50–100 mg内服するなど)を加える

<レベル4>

対象:

・性的倒錯の症状が強く、性的暴行のリスクもある人

・性的サディズムまではない人(性的サディズムがある場合は、次のレベル5の治療になります)

・治療をきちんと続けられる人(もし、治療をきちんと続けられない場合は、薬を筋肉内注射するか、レベル5の治療になります)

・レベル3の治療が効果不十分の人

治療:

・高用量の男性ホルモンを抑える薬を使う

・高用量のシプロテロン(1日200–300 mgの内服、または、月1-2回200–400 mgの筋肉内注射)

・または、高用量のメドロキシプロゲステロン(1日50–300 mgの内服)を使う

・不安症状、うつ症状、強迫性障害の症状などがあれば、SSRIを一緒に使っても良い

<レベル5>

対象:

・性的暴行のリスクが高い人

・性的サディズムがある人

・レベル4の治療が効かないか、きちんと続けられない人

治療:

・作用時間が長いGnRHアナログを使う

・例えば、トリプトレリンリュープロレリン酢酸塩といったGnRHアナログを毎月3mg注射するか、3ヶ月ごとに11.25mg注射する

・必要に応じて、GnRHアナログの治療の評価のためにテストステロン(男性ホルモンの一種)の測定を行うと良い

・GnRHアナログの治療の1週間前から、治療が始まった後の最初の1ヶ月の間は、シプロテロンを一緒に使っても良い(GnRHアナログの治療を始めたばかりの頃は、かえって男性ホルモンが増えたり、性欲が増えることがあるため)

<レベル6>

対象:

・最重度の性的倒錯

・レベル5の治療が効果不十分の人

治療:

・レベル5の治療であるGnRHアナログに加えて、レベル4の治療である高用量の男性ホルモンを抑える薬も使う

・さらにSSRIを併用しても良い

さて、以上になります。ちょっと長いですが、いかがでしたでしょうか?

日本では性的倒錯の治療は何も決まっていないわけですが、世界的には、このように、かなり科学的に決められているのです。

以下、細かな部分をさらに解説していきます。

男性ホルモンを抑える治療

GnRHアナログによる性的倒錯の治療

SSRIによる性的倒錯の治療

#性的倒錯

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