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  • Tomoyuki Saito

子供たちにメンタルヘルスのサービスを


今回は子供のうつ病についての研究報告をシェアします。

引用元:Reduction in adolescent depression after contact with mental health services: a longitudinal cohort study in the UK. The Lancet Psychiatry. 2017. (論文タイトル、雑誌名、発表年)

こちらは、イギリスのケンブリッジ大学の調査です。

この結果は、子供の心のケアを考える上で、大きなヒントになるかもしれません。

さて、皆さんは、子供の頃に辛い思いをしたことはないでしょうか?

全くないと言い切れる人は、ほとんどいないと思います。

では、うつ病になったことがある人は、どうでしょう?

こう聞かれると、よく分からないと答える人も多いかもしれません。

子供の頃に、鬱々とした気分が続いた経験がある人はいるでしょうが、それがうつ病だったかどうかは分からないですよね。

子供は自分を客観的に評価するのはまだ難しく、自分で自分のことが分からないものです。

だからこそ、

子供の頃のうつ病は発見されにくい

と言われています。

子供の頃にうつ病になったら、学校カウンセラーに相談したり、メンタルクリニックに受診したりと、対応にはいくつかの手段があると思います。

今回は、これらをまとめて、「メンタルヘルスのサービス」と呼ぶことにします。

ようは、心のケアを専門とする機関の総称です。

さて、イギリスで、メンタルヘルスのサービスが、どの程度、効果があるものなのか調査されました。

何らかのメンタルヘルスのサービスを受けて、十代の子供のうつ症状がどうなるのか、長期的な評価が行われたのです。

この調査は、2005年の4月から2010年の3月にかけて実施されました。

14歳の子供1238人と、その扶養者が調査対象です。

対象者は、最初に症状や、メンタルヘルスのサービスを受けたことがあるか否かが評価され、その後、長期的にフォローアップされ、18ヶ月後(1年半後)と36ヶ月後(3年後)に症状が評価されました。

子供たちのうつ症状は"Mood and Feelings Questionnaire"(直訳すると、「気分と感情の質問」ですね)というアンケートに子供たちが自分で答える形で評価されています。

このように、うつ症状の評価は、アンケートのテンプレートを用いることが多いです。

14歳の時点で、過去1年以内にメンタルヘルスのサービスを受けていた子供たちは、メンタルヘルスのサービスを受けていなかった子供たちと比べて、うつ症状が低かったようです。

これは、過去に受けたメンタルヘルスのサービスが、子供たちのうつ症状を改善させたものと考えられます。

そして、メンタルヘルスのサービスを受ける、受けないで、うつ病になる可能性も比較されています。

つまり、軽く悩んでいるとか、鬱々としているというレベルではなく、医学的に「うつ病」と診断されてしまうレベルまで、心が病んでしまうリスクということです。

この調査によると、メンタルヘルスのサービスを受ける、受けないで、17歳までにうつ病を発症するリスクは7倍(オッズ比)も違いました。

この数字は、メンタルヘルスのサービスを受けた集団と、受けなかった集団で比較したものですが、不公平にならないように、初めのうつ症状は同じとなるよう集団を調整しています。

そのため、初めの時点、つまり、14歳の時点では、うつ症状の程度は横並び、同じくらいの集団だったわけです。

しかし、14歳から17歳になるまでの間、子供たちをフォローアップすると差がつきます。

その結果、メンタルヘルスのサービスを受けない集団は、メンタルヘルスのサービスを受けた方よりも、7倍もうつ病になりやすかったというのです。

このことから、子供たちにメンタルヘルスのサービスを受けさせる意義が分かってきます。

メンタルヘルスのサービスには、うつ症状を改善させる効果もあれば、予防する効果もあるということです。

子供の情緒が安定していない時は、うつ病にまで発展させないためにも、早めに専門機関で心のケアをすることが大事なのかもしれません。

どんな病気でも早期発見、早期治療は原則ですから。

ただ、これはイギリスの調査報告です。

日本では、なかなか子供用のメンタルヘルスのサービスが無いので、そこが壁になるかもしれませんね。


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