• Tomoyuki Saito

経頭蓋直流刺激


こちらは、昨年にnoteで公開した記事です。

経頭蓋直流刺激という治療に関する研究の紹介です。

Electrical stimulation of the motor cortex enhances treatment outcome in post-stroke aphasia. Brain. 2016.

経頭蓋直流刺激とは、頭に電極をつけて弱い直流電流を流すというもの。

精神科病院とかで古くから行われている治療法で、頭に強い電流を流す電気けいれん療法というものがありますが、それとは全然違うものです。

経頭蓋直流刺激では、もっと苦にならないような弱い電流を使います。

紹介する研究では、失語症という言葉が分からなくなったり、使えなくなったりする病気の治療に、この経頭蓋直流刺激が有効かどうか調べています。

失語は色々な原因で起こるんですが、例えば脳梗塞など。

脳梗塞とは脳の血管がつまり、脳の細胞が死んでしまう病気です。

右利きか左利きかにもよりますけど、大体の人は左脳に言葉を扱う神経回路があります。

この場所に脳梗塞が起こると失語になるわけです。

今回の研究では、脳梗塞になった後に失語になってしまった方、26人を対象にして、この経頭蓋直流刺激を行いました。

そして、同時に言葉のリハビリを行いました。

それで、経頭蓋直流刺激をやらずに言葉のリハビリした人と、リハビリの成果を比較しています。

実は、すでに、失語症に対して経頭蓋直流刺激をしながらリハビリすると良いことは他の研究結果でも示されています。

しかし、その経頭蓋直流刺激の効果が長く続くのかどうかということは、あまり調べられていなかったみたいです。

それで、この研究では、2週間にわたって経頭蓋直流刺激をしながら言葉のリハビリしてみて、その直後だけでなく、半年後も有効性が続いているかどうかを調べています。

すると、2週間のリハビリの直後に言語機能が回復していただけでなく、半年後もその有効性が続いていたことが確認できたみたいです。

経頭蓋直流刺激をやった人とやらなかった人では、半年後の結果に差がつきました。

どうやら、半年間は経頭蓋直流刺激の効果が続くみたいですね。

また、この研究はもう一つすごいところがあります。

従来の経頭蓋直流刺激は、頭の精密検査をして、どこに電流を流せばいいのか探ってから始めていたそうです。

しかし、このやり方だと検査の時間もコストもかかってしまい、そもそも高価な精密検検査の装置を持つ大きな施設でなければできないとかで、大変なんだとか。

やはり、医療というのは科学技術以外にも、お金がいくらかかるかという現実的な問題も出てきますからね。

それで、この研究では電気で刺激する場所を左脳の一次運動野という場所に決めました。

なぜなら、それが一番簡単な方法だからだそうです。

それで、この簡単なやり方の経頭蓋直流刺激でも有効だという結果が出せたわけです。

簡単にできる方法だと、コストもかかりませんし、小さな医療機関でもやりやすくなります。

つまり、よりたくさんの人に最新の治療をお届けできるということになります。

こういうのを見ると、とても優しい視点で研究しているなと感心します。

ちなみに、この経頭蓋直流刺激をしながら言葉のリハビリする時間ですが、どのくらいだと思いますか?

1日2回、1時間半にわたって行うそうです。

合計すると1日3時間。

リハビリといっても、言葉ですから、ようは言葉の学習です。

つまり、勉強です。

そう考えると、結構、長いですよね。

学生の方は、そんなに勉強してます?

もちろん毎日ずっとではなくて、今回の研究では2週間だけです。

しかも、そのうち、8日間だけがリハビリの日数ということで、そんなに長期ではないですね。

イメージとしては、テスト前の詰め込み勉強みたいなものですか。

僕は学生時代を思い出すと、テスト前の詰め込みって、テストが終わるとすぐに忘れちゃうから、あまり意味ないなと思ったものです。

しかし、この研究では半年後にも効果が持続したといいます。

そう考えると、経頭蓋直流刺激の効果はすごいですね。

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#認知機能

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