• Tomoyuki Saito

うつ病ガイドライン徹底解説10 心理教育、うつ病の説明



今回は、うつ病の治療を始める時に、どんな説明をしたら良いのか解説します。

うつ病ガイドライン徹底解説9でも説明した通り、うつ病についての説明は心理教育と言い、治療上とても重要となります。

ここでは、もう少し突っ込んで、どのように説明するかを解説します。

まずは、説明する時の心得、配慮する点を伝えておきます。

うつ病になると、考え方が暗く、ネガティブになります。

例えば、「治療なんかしてもどうせダメだ」なんて思う人もいます。

医師としては治療を受けてほしいと思うので、「いや、そんなことはない」と真っ向から否定したくなります。

しかし、うつ病になると何でも否定的に考えてしまうものなので、こんな風に考えるのも仕方のないことなんですね。

自分の意見を否定されると、余計に辛くなるものです。

まずは、あまり否定せずに、否定的な気持ちでも、受け止めることが大事です。

少し専門的な言い方をするならば、相手の気持ちに共感し、承認してあげることです。

こうして相手の気持ちを受け止めることで、良好な関係を築くこともできると思います。

前回も言いましたが、精神科の場合は患者さんと医師の関係性が良くないと、治療になりません。

逆に言えば、関係性を築くことも治療の一環なのです。

また、場合によっては他の医師に紹介する、他の病院を勧めることもあると思います。

これは、その方が患者さんにとってベストな治療ができるからなのですが、否定的に捉える傾向の強い人では、見捨てられたと思ってしまうかもしれません。

他の医師や病院を勧めるときは、別に見捨てるわけではなく、その方が治療にとって良いことなんだと説明する配慮が大切です。

それでは、うつ病についての具体的な説明内容を解説します。

先ほども言った通り、心理教育というもので、治療の一環ですね。

うつ病とはどういう病気で、どのような治療があるのかを丁寧に説明していきます。

しかし、問題は、うつ病という病気がどういうものか、完全には明らかになっていないということです。

うつ病学会のガイドラインでは、ストレスから始まって、脳の機能低下が起こるといった病気の流れが、アルゴリズム(矢印を使った図)として書かれています。

このように、明確なアルゴリズムを出して説明するのは分かりやすくはあると思いますが、現実にはここまで綺麗に分かっていません。

また、最近では、うつ病には色々なタイプがあると考えられています。

どのうつ病も同じ流れ、同じアルゴリズムではないんですね。

ですから、私個人の意見としては、患者さんに合わせて、最適な説明をしてあげる方が良いと思います。

いずれにしても、ストレス疲労睡眠状況が大切なのは明らかですから、しっかりと休養を取ることが大事だという説明は必要でしょう。

また、ある程度の重い症状があれば、薬物療法も大事だという説明も必要だと思います。

さらに、本当に重症の方には電気を使った治療(修正型電気けいれん療法)もあります。

最近では磁気を使った治療(反復性経頭蓋磁気刺激法)も行われつつあります。

当然、精神療法、心理カウンセリングといった手段もあります。

つまり、治療の選択肢は沢山あるわけです。

選択肢が一つしかないと言われるよりも、選択肢がたくさんあると言われる方が安心できますよね。

だから、たくさんの選択肢があることを説明するのが良いと思います。

また、生活面では、お酒を控えること(アルコールはうつ病や睡眠を悪化させます)や、光に当たること(冬になるとうつ病になる季節性うつ病の場合)などを指導する場合もあります。

さらに、治療による効果がどのくらいなのかも説明が必要です。

うつ病の治療は数ヶ月単位でかかりますし、アメリカの研究では、約1年間治療しても、うつ病を克服できる人は2/3という統計が出ています。

なかには治りにくい方もいるということです。

こうした残念な現実も患者さんに伝えないといけませんが、あまりネガティブな言い方にならないよう配慮は必要でしょうね。

あと、働いている人の場合、うつ病のために休職すべきか否かを考えることがあります。

もちろん、重度のうつ状態なら休職が必要ですが、そうでない場合は休職せずに外来で治療することも多いです。

休職のメリット、デメリットを考えながら、その人にとってベストな選択をするのが良いですね。

うつ病ガイドラインでは、メリット、デメリットを以下のように説明しています。抜粋して記載します。

メリット

  • 職業上のストレスや葛藤から離れ、保護的環境で回復を図ることができる。

  • 回復に向け、治療やリハビリテーション、周囲の関 係者との関係修復などにあてる時間を、より多く確保できる。

  • うつ病発症(あるいは治療薬剤)によって、普段より生じる可能性が増す、職場で起こる事故のリスクを減らすことができる。

デメリット

  • 日中の活動性が低下することや、職場で得られていた日常的対人接触の機会を失い孤立した生活を送る結果、症状悪化につながり得る。

  • 職場を離れている期間が長くなると、結果的に復職への不安が高まり、ある種の「職場恐怖」ともいうべき状態が生じる可能性がある。

  • 以上の結果、職場を長く離れていると、より復職が困難になり得る。

こうしたことをよく考えて休職を決めると良いですね。

では、次回はうつ病の薬の治療について説明していきます。

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