• Tomoyuki Saito

ベンゾジアゼピンとクリニックの収益


日本のメンタルクリニック、精神科、心療内科(名前は違えど基本は同じものですから、以下メンタルクリニックに統一します)は薬をたくさん出すため、よく「患者を薬漬けにする」などと非難されることがあります。これは事実なのですが、薬にもたくさん種類があるので、ここはもう少し深く掘り下げるべきでしょう。

色々なケースがありますが、今回はベンゾジアゼピンという種類の薬について注目したいと思います。ベンゾジアゼピンは、主に不安を取るタイプ、例えばデパス(エチゾラム)やソラナックス(アルプラゾラム)などと、睡眠薬のタイプ、レンドルミン(ブロチゾラム)やサイレース(フルニトラゼパム)などがあります。このベンゾジアゼピンは即効性があります。使った方の中には、すぐに効くのでとても助かるという意見もあります。ただベンゾジアゼピンは1ヶ月以上使い続けると依存性が出てきて、精神的にも身体的にも依存してしまいます。そのため、精神的に落ち着き、薬を使う必要が無くなっても、なかなかベンゾジアゼピンをやめられないという問題が起こります。これをベンゾジアゼピン依存症と呼んだりします(以前、「ベンゾジアゼピン依存症の治し方」で書きました)。

今回は、このベンゾジアゼピンとメンタルクリニックの収益について考えてみたいと思います。クリニックの診療費用は、保険を使ったものであれば全国一律に厚生労働省が決めています。これは、「1回いくら」みたいな固定額で、良い治療をしたからといって高くなるわけではありません。日本の診察代は、諸外国と比べて格安になってますし、いつでもどこでも同じ料金というシステムは、使う側にとっては良い部分もあると思います。ただクリニック側の見方で考えると、医療レベルを上げても収益が上がらないシステムなので、より良い医療を提供する経済的なインセンティブはありません。収益を上げるには、たくさんの患者さんに来てもらうことや、同じ患者さんに何回もクリニックに来てもらうのが良いことになります。

この何回もクリニックに来てもらうことに、ベンゾジアゼピンが関わってきます。本来なら精神的に十分に安定したら治療は一定期間で終了しますから、クリニックに来る必要はなくなります。しかし、クリニックにしてみると、患者さんの通院が途絶えると収益が下がります。だからといって、良くならないように治療していても患者さんから不満が出るでしょう。それならば、良くなってからもクリニックに通ってもらえると、なにかと都合が良いわけです。先ほども言った通り、ベンゾジアゼピンは即効性があり、飲むとすぐに落ち着きます。このベンゾジアゼピンを長期に使うと依存性が出てくるので、病状が良くなった後もなかなかやめられません。このベンゾジアゼピンは病院で処方せんをもらわないと薬局で買えないので、ベンゾジアゼピンを手に入れるためにはクリニックに来ないといけません。この流れで、ベンゾジアゼピンを飲んでいる人は精神的に安定した後も、何度も何度もクリニックに通い続けることになるのです。何十年もベンゾジアゼピンを飲み続けている人もいます。患者さんとしてはベンゾジアゼピンをもらえればとりあえずは困りませんし、クリニックとしても何度も通院してもらえるため収益が上がり万々歳です。こう考えると、一見としてWin-Winの関係が成り立っているように思えます。しかし、本来はクリニックに来る必要がない人を、薬に依存させて来させているとも考えられます。ベンゾジアゼピンには色々と副作用(以前の記事「ベンゾの害」を参照)がありますし、通院するにはお金もかかります。これは全部患者さんの負担です。患者さんをベンゾジアゼピン依存症にしてクリニックの収益を上げることは、本当に許されて良いことなのか、社会全体でも考えなければならない問題でしょう。もちろん、良心的な精神科医もたくさんいますが、精神科医も医者である前に人間ですから、経済的なメリットを求めたくなる人が出てくるのも仕方ありません。精神科医が患者さんをベンゾジアゼピン依存症にすることに経済的なインセンティブを与えるような仕組みは、改革が必要に思います。

ベンゾジアゼピンを続けることに意味がある人もいるとは思いますし、絶対に長期投与してはいけないとは言えませんが、せめて、ベンゾジアゼピンを処方する前に依存性があることを精神科医は説明した方が良いと思います。インフォームドコンセントは精神科でも大事なことですから。

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#ベンゾジアゼピン

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