• Tomoyuki Saito

アミロイドβと体内時計



歳をとると睡眠の量も質も変化しますが、時間がずれるのも多いのはご存知でしょうか。本来であれば、昼間に活動して、夜になると眠るというのが一日のサイクルです。私たちの中にも時計があり、ある程度は一日のリズムを保ってくれます。これは体内時計などと呼ばれますが、専門用語では概日リズム(サーカディアンリズム)と言います。しかし、高齢になると、この体内時計がずれてしまい、昼に寝て夜起きる生活になってしまうなど、昼夜逆転してしまうことは珍しくありません。また、認知症になると、さらに体内時計が不正確になり、一日のサイクルが崩れやすくなります。 認知症の中で一番多いのは、アルツハイマー型というものです。アルツハイマー型認知症の人の脳内には、アミロイドβなどの異常なタンパク質が長い年月をかけて蓄積されます。実は、物忘れなどの認知症の症状が出る何年も前から、こうした変化が少しずつ起きていることが分かっています。認知症には前段階があるのです。 アルツハイマー型認知症の人で、物忘れなどの認知症の症状が明らかに出ている場合では、昼夜逆転などの体内時計の乱れがよく見られます。それならば、アルツハイマー型認知症になる前段階の人ではどうでしょう? 前段階とはいえ、脳内には異常なタンパク質がたまってきているわけです。記憶力は正常ですが、脳には異常があります。こういう人たちの体内時計はどうなっているのでしょうか? まだなんともないのか、それとも認知症の人のように一日のサイクルに乱れがあるのでしょうか。 今回は、この疑問について科学的に調べた論文を紹介します。

引用文献:Circadian Rest-Activity Pattern Changes in Aging and Preclinical Alzheimer Disease. JAMA Neurol. Published online January 29, 2018.

これはアメリカで行われた研究で、記憶力などは正常で認知症の症状が無い人たちが参加しています。その数は205人です。この中でしっかりとデータを取れた人は、最終的に189人でした。平均年齢は66.6歳ですから、初老期というところでしょうか。 研究参加者は、一日の行動を1週間から2週間にわたって記録します。これにより、昼夜のリズムが分かります。また、脳の中の異常なタンパク質、アルツハイマー型認知症の原因と考えられるアミロイドβというものを、特殊なPET検査というものや脳脊髄液の検査を使って調べたようです。これでアミロイドβが検出されれば、アルツハイマー型認知症の前段階ということが分かるわけです。 この結果を統計学的に解析したところ、アミロイドβを持つ人、つまりはアルツハイマー型認知症の前段階の人は、そうでない人たちより、一日のリズムが乱れていることが分かりました。また、アミロイドβを持たなくても、年齢が高いと一日のリズムが乱れやすいようです。 この結果が持つ意味は大きいです。いくら脳にアミロイドβが蓄積していても、物忘れなどの症状が無ければ認知症とは言いません。現在のところ、脳にアミロイドβがたまっていても、今のところは認知症ではないので問題ないと捉えられています。しかし、認知症の前段階でも、脳にアミロイドβが蓄積していると、一日のサイクルが乱れているなど問題が発生している可能性があるのです。まだ認知症になってないから問題なしとは言えないということです。 今後は脳のアミロイドβがどれだけ色々な症状を引き起こしているのか、もっと解明されてくるでしょう。物忘れなど認知症の症状だけでなく、睡眠や気分などの精神的な部分にまで影響している可能性があると思います。 実は、認知症では沢山の精神症状が出ます。認知症の精神症状の治療については、こちらで詳しく解説しています。

#認知症

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