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統合失調症の陰性症状(無気力など)を治す薬



統合失調症の陰性症状

統合失調症の陰性症状に効く薬がイスラエルで開発されたようなので、ご紹介します。それにしても、最近はイスラエルのスタートアップがすごいと良く耳にしますね。

統合失調症とは、20歳くらいに幻聴や被害妄想などが出てくる病気ですが、こうした幻覚妄想という症状は陽性症状と呼ばれます。統合失調症は陽性症状だけでなく、やる気が出なくなって活動性が低下したり、感情が乏しくなって喜怒哀楽の変化が少なくなるような陰性症状というものも出てきます。陰性症状が出ると働く気力もなくなるので経済的に厳しくなりますし、このため生活保護を受ける場合もあります。また、引きこもりの原因にもなるので、かなり生活の上では問題になってきます。生活保護や引きこもりは社会問題にもなっていますので、個人の問題ではすみません。

このように大きな問題を引き起こす陰性症状ですが、今までは陰性症状を改善する薬はほとんどありませんでした。非定型抗精神病薬または第2世代抗精神病薬というものが陰性症状に効くとうたう場合がありますが、これは古い定型抗精神病薬というものが陰性症状を悪化させるのに対し、非定型抗精神病薬はあまり悪化させないくらいのものです。しっかりと陰性症状を改善するわけではないんです。

今回は、しっかりと陰性症状を改善させたという科学的なデータが出てきました。その薬はまだ名前が付けられておらず、MIN-101というコード名がつけられています。それでは、この臨床試験の結果を紹介しましょう。

文献:Davidson M, et al. Efficacy and Safety of MIN-101: A 12-Week Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial of a New Drug in Development for the Treatment of Negative Symptoms in Schizophrenia. Am J Psychiatry. 2017. doi: 10.1176/appi.ajp

MIN-101という薬は脳のシグマ-2受容体とセロトニン2A受容体という部分に作用するそうです。統合失調症の薬というとドパミン受容体に作用して幻覚妄想を抑えるものばかりなのですが、MIN-101はドパミン受容体には全く作用しないので、従来の統合失調症の薬とは全く違うものになります。

この研究に参加した人は、統合失調症の患者さんですが、幻覚妄想という陽性症状が落ち着いていて、病状が安定している方です。全ての薬をやめて、プラセボ薬(偽の薬)またはMIN-101を32mgか64mgを内服し、12週間治療します。全ての薬を止めると病気が悪化するリスクはありますが、純粋にMIN-101の作用を確認することができます。陰性症状はPANSSなどいくつかのメジャーな尺度により点数化しています。こうして数値化すれば統計学的な解析も可能になります。さて、この結果ですが、MIN-101は統合失調症の陰性症状を明らかに改善させる効果があることが分かりました。統計学的にも有意であり、偶然の可能性は低いです。副作用も目立ったものはなかったようです。

この研究は二重盲検法という患者さんも医者もどの薬を使っているか分からないやり方にしているので、MIN-101を飲んでいる人の点数をわざと良くしたりはできません。また、ランダムに薬を割り振るので、特定の人だけに薬を割り振るようなズルもできません。つまり、あらゆるチョンボをなくした、もっとも信頼性の高い方法で臨床試験が行われていますので、確かな結果と言えるはずです。ここまでくると、実用化も近いしですね。海外で実用化されれば日本にもそのうち入ってくるかもしれません。

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